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吸血鬼は永遠に

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うかしら?」
「昔から良くあるだろう。貴族ってのは、最盛を極めた後、堕落して悪に染まったりするものさ。貧困の結果犯罪に手を染めるのとは訳が違うんだからな」
「そうね……」
ローラは写真の伯爵の姿を思い出していた。確かに全き善人という風情では無かった。でも威厳があり、立派そうな面構えだったわ……。ローラがそう答えようとした時、執事が戻って来た。

「お待たせ致しました」
ティーポットとカップを乗せたワゴンを、執事は部屋の隅に停めた。非の打ち所の無い丁重な手つきで、紅茶をカップへ注いでいく。アールグレイの高雅な香りが、ただでさえ優雅な部屋を更に格調高く満たしていった。二人は大人しくソファーに座った。
「どうぞ」
「ありがとう」
二人の前のテーブルに紅茶を入れたカップが置かれたが、二人は口を付けなかった。
「それで……改めてお訊き致しますが、どういった捜査で?」
執事は座らずに二人の向かいの壁の前に立った。その美しい立ち姿だけで、長年の執務に磨かれて来た有能な執事である事が窺えた。
「先刻も言いましたが、この屋敷にマリアン・ヤングというメイドが居ますね? 一週間ほど前の事です。彼女の母親から訴えがあったのです。つまり、いつも娘は休暇には実家へ帰って来るのに、今回は帰って来なかった、と。こちらにその旨連絡したら、忙しいから帰れない、と言われたと。母親はそれはおかしい、毎回休暇日には帰省していたのに何かあったのではないか? と疑っています」
マックスは嫌疑の詳細を淀みなく伝えた。
「左様で。確かにマリアンというメイドがおります。実は一週間前は当屋敷で集会がございまして」
「集会?」
「はい。旦那様の遠来の御一族やら、御友人やらがお泊まりになられて、晩餐会を催しました。その準備やお客様のお世話で、当屋敷はてんてこ舞いの忙しさだったのです。何しろ皆やんごとなき方々ですからな。抜かり無く歓迎の意を表すのに、旦那様からくれぐれもよろしく、と頼まれておりました。当然メイドも休みなく働いておりましたよ」
執事はにこやかに答えた。
「その集会というのは?」
「簡単に申せば御一族の懇談会です。普段はお互い中々お会いになれませぬ故、盛大に催すのです」
「そうですか……。そのメイド、マリアンに会ってみたいが」
「ええ。ではこちらに呼びましょう」
執事はそう告げると、呼び紐を引いた。
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