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吸血鬼は永遠に
序章
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そこで働いているメイドの母親から、休暇になっても娘が戻って来ない、と訴えがあったのでな。行って調べてこい。詳しい事はこれを読め」
課長はファイルをローラに手渡した。
「以上だ。戻って良いぞ」
「分かりました」
ローラーは一礼すると部屋を後にした。

 ローラは自分のデスクに戻ると、先程課長からもらった資料を調べ始めた。

●オーガスト・グレイ伯爵。42歳。グレイ家の現当主。

●妻ヴァージニアを十二年前に亡くして以来独身。孤独を好み人付き合いは殆ど無し。

●一週間前より、当家に勤めていたメイド、マリアン・ヤングの母、アンナより、「休暇に入っても娘が帰って来ない。屋敷に連絡を入れると『娘は忙しいから帰れない』と返事が来たが、娘はいつも必ず休暇には帰省していたのにおかしい、調べて欲しい」と訴えがあった

「伯爵……」
ローラはファイルに貼り付けられた写真をまじまじと見つめた。証明写真だから、顔の詳細な雰囲気までは分からないが、厳めしさを感じさせる、だが端正な男性的な顔立ちだった。貴族など、今までお目にかかった事もない。そもそも住んでいる世界が違うのだ。恐らく向こうだってそう思っている事だろう。果たして捜査は上手くいくかしら? ミラの胸に不安が過った。

「貴族の屋敷へ捜査だって?」
マックスがファイルを覗き込む。
「そうよ。貴方と二人でやるのよ」
「ふーん、中々良い男じゃないか」
「そういう事は関係ないでしょう?」
「そうかな? 案外そのメイドとやらも、ご主人様の男振りに惚れ込んで、それで屋敷に居着いているのじゃないか?」
「そんな事あるわけないでしょう? 雇い主と使用人の立場よ」
「分からんぞ。世の中っていうのは、案外そんなものさ」
「とにかく、大体の状況は把握したわ。捜査に出るわよ」
「おう。行くか」
二人はオフィスを後にした。
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