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幻想甲虫録
刻まれし始まり 前編
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時は少し前に遡る。ソウゴがムシキングになりたいと言い出したのは数日前。鈴奈庵である伝記を読んでいた時のことだった。


ソウゴ「スッゲェ……俺と同じカブトムシが外の世界で森を守ってたなんて……」


伝記を食い入るように読むソウゴ。文章や絵を余すことなくどんどん目に通す。
彼が読む伝記に書かれていたのは『外の世界でかつて森の平和を守った1匹のカブトムシの英雄がいた』こと。森の妖精の少年と共に捨てられた甲虫たちやそんな彼らを操って森を支配しようとする悪の妖精との戦い……ソウゴはそれらに興味深げな目をしていた。


霊夢「ソウゴ、あんたそれもう1時間以上も読んでるわよ?どこがそんなに気に入ったんだか………」


そんなソウゴに呆れていたのは、当代の博麗の巫女を務める『博麗霊夢』、ソウゴの相棒。見た目は愛らしいが、少々口が悪く短気、たまに暴力的なのが玉に瑕である。
読み終えたソウゴは伝記を閉じると、目を輝かせながらこう言った。


ソウゴ「決めた!俺は王者になる!幻想郷最強の…甲虫王者に!2代目ムシキングに!」

霊夢「………はいはい、1回永遠亭で検査受けてきましょうね〜」

ソウゴ「嫌です。あんなマッドドクターな人の治療は断じて嫌です」


と、ざっくり説明すればソウゴがムシキングになりたいという夢を抱いたのはその日からであった。
その夢を追いかけ始めたことがきっかけか、彼の運命が大きく左右されることになるとは誰も知らなかった。










そして今に至る。ムシキングになることを決意したソウゴは今日も鈴奈庵である1冊の本を読んでいた。



【ムシキングになるための本】



ソウゴ「やっぱり誰にも負けないパワーか…そのパワーを身につけるには…」

霊夢「あんた、ホントに飽きないわね……努力したってなれるもんじゃないと思うけど」

青いパプアキンイロクワガタ「………」


相棒がこんなに勤勉なところは見たことがない。霊夢は少しあきれながらも、心の中では感心していた。
そんな1人と1匹の会話を聞いていたのは鈴奈庵の娘、『本居小鈴』。肩に乗っているのは青いパプアキンイロクワガタ『カルボナーラ』。
だがカルボナーラはしゃべることは滅多になく、基本的に無口。そのためいつも小鈴が代弁してくれる。


カルボナーラ「………」


いつも無口で周りには何を言おうとしているかはわからないものの、ずっと一緒にいる小鈴には朝飯前だ。


小鈴「霊夢さん、それはちょっと酷ですよ?誰だって努力すればなれると思いますよ?カルボナーラだってこう言ってます。『99%の努力と1%のひらめきさえあれば乗り越えることができる』って」

霊夢「それはあくまでも過程で
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