暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/WizarDragonknight
クイッククイックスロー
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
のだろう。
 そんな自己嫌悪に陥りながらも、紗夜は続ける。

「私はそんなことないよ? ココアは末っ子だけど、私にも兄が二人いるし。何でも真似して、色んな影響を受けちゃったみたい」
「何でも真似して……」

 紗夜は、胸の内がぞわりと感じた。

「それ、辛くないんですか?」
「え?」
「姉だからって、何でも期待されるの。それを、妹が簡単に飛び越えたとしたら、辛くないですか?」

 こんなことを、モカに言って、自分は何を望んでいるのだろう。
 そんなことさえ、脳裏に過ぎる。
 だが、一度口にした言葉は、もう止まらなかった。

「何でもかんでも真似をすると、こっちも辟易(へきえき)するというか……」
「でもね」

 モカはほほ笑んだ。

「そんな妹も、可愛いと思わない?」
「え?」

 モカがにっこりした笑顔を向けてくる。

「貴女にも、妹がいるんだね? でもさ、そういう劣等感を感じるってことは、お互いに高め合っていけるってことだと思うし、悪いことじゃないよ?」
「……」

 紗夜は口を噤んだ。
 それを納得したと受け取ったのか、モカは紗夜の肩を叩いた。

「たまには、お姉ちゃんって垣根なんてなく、妹に頼ったりするのもいいと思うよ? 追いかけてくるココアだって、いつかこれなら、私よりも上手いかもって思うこともあったからね」
「そうですか」

 もはや、モカの言葉など聞こえてこなかった。
 ただ、紗夜の目には、ここにはいない双子の妹の姿しかなかった。
 そして、その口からは恨み言だけが綴られていた。

「お姉ちゃんだからなんだって言うのよ……!」



「結構買ったな……」

 近くのコンビニで大きなペットボトルの飲み物を買い終え、ハルトは財布の中で小銭を弄んでいた。

「ま、コーラとポカリと……適当に二、三本ずつ買ったからいいよね」
『コネクト プリーズ』

 さらに、普段からよく使う魔法で、魔法陣を開ける。可奈美のすぐそばに通じるように念じ、ペットボトルが入った袋を魔法陣に放る。これで、ピクニックのところにペットボトルが置かれるはずだ。
役目を終え、合流しようとしたところ。
 ハルトは、その目の前の人物に足を止めた。

「クイッククイックスロークイッククイックスロー」
「社交ダンス……だよね?」

 日傘を刺した男性が、通路の真ん中で踊っていた。
 口ずさむステップと、周囲の迷惑も考えないまま踊り続ける男性。左右を白と黒で別れた服を着ており、跳ねた髪形も合わさって、ピエロという印象を抱かせる。

「あ、あの人そういえば……」

モカを迎えに見滝原駅へ向かった時。ハルトを越える大道芸の腕を見せたのだ。その後も、モカとこの公園に来た時、一度
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ