暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
G編
第87話:届かぬ声、届かぬ手
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 その日、響は未来と共にスカイタワーの水族館に来ていた。戦闘参加を禁止された彼女が、勝手に無茶したりしないようにという監視の為である。

…………と言うのは単なる口実で、颯人の一番の目的は奏をこっそりとデートに誘う為だった。ここ最近奏の様子が明らかにおかしいので、この機に彼女の気分転換を兼ねて彼女の身に何があったのかを聞き出す為であった。

「どうだ、奏? 楽しんでるか?」
「ん?…………あ、あぁ」

 響と未来を視界の端に捉えながら、颯人は変装した奏に話し掛ける。しかし奏の反応は芳しくない。相変わらず心此処に非ずと言った感じだ。
 依然として様子のおかしい彼女に、颯人は軽く肩を竦めてしまった。

「どうしたよ、奏? お前最近マジで変だぞ? 目の下には隈まで作ってよ」

 悪夢の影響は隠しきれない程になっていた。見るからに覇気が無くなり、ぼんやりしている事も多くなってきた。これは流石におかしいと翼も心配したが、奏は翼に対しても全てを話す事はしなかった。
 今回の水族館デートは、颯人の意思であると共に翼からの懇願でもあった。どうにかして奏を元気付けて欲しい。それが出来なくても、最近様子がおかしい原因は何なのかを聞き出してほしいと。

 快諾した颯人は意気揚々と奏を任務と称してデートに誘いだしたのだが、現状成果は芳しくはなかった。

 そんな颯人からの心配に、奏は茫洋とした様子で答えた。

「ん……うん。なんか最近さ、夢見が悪くて……」
「夢見? どんな?」
「よく……覚えてない。ただ凄く悪い夢だって事だけは覚えてる」

 奏の言葉に颯人は腕を組んで考える。今の奏の状態は明らかに異常だ。自惚れるつもりではないが、彼女の事は颯人が誰よりも知っている。彼女に限って、ちょっとやそっとの事で悪夢に苛まれるなど考え辛い。

 となると、彼女の悪夢には何か原因がある筈だ。それも何か意図的な原因が。

 任務も忘れて悩んでいると、徐に奏が颯人の服の裾を引っ張った。何だと颯人が奏の事を見ると、彼女は珍しく弱々しい目で彼の事を見ていた。

「どうした、奏?」
「わ、分かんない……分かんないけど、何か……こうしたくて……」

 ますます以て奏らしくない。颯人の知る奏はこんなに弱々しい女性では無かった筈だ。一瞬別人が成りすましているのではないかと言う可能性も考えたが、それはあり得ないと颯人の心が否定した。彼女は間違いなく颯人が知り、颯人が愛している天羽 奏本人だ。

 そこで颯人は不意に以前、ウィズに教わったある事を思い出した。魔法の中には他人の心を乱し、心に隙を作るものがあると言う。
 奏の様子がおかしくなったのはリディアンの学祭に行った時。あの時から目に見えて奏の様子がおかしくなった。つまりその時に何かされた可
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