第四章
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「今じゃ考えられなかったな」
「ああ、流し素麺ですね」
「伝説になっていますね」
若い社員達もその話に乗った。
「人がいなくて」
「そうしながら野球観ていたって」
「聞いた話ですけれど」
「そんなところだったって」
「昭和の二十年代の球場だったから」
昭和二十七年に出来た休場だった。
「やっぱりな」
「古い球場でしたね」
「出来て四十年以上でしたか」
「いや、出来て十数年で」
昴の子供の頃でというのだ。
「もうボロボロだったな」
「そんな球場だったんですね」
「もうそれだけで」
「その球場も遂に建て替えか。決していい球場とは言えなかったが」
それでもとだ、昴は子供の頃そして仕事から帰って近鉄のそのシーズン最後の試合のことを思い出しながら言った。
「懐かしいま」
「懐かしいですか」
「そうですか」
「ああ、子供の頃のことを思い出すから」
それでというのだ。
「本当にね」
「そうですか」
「懐かしいですか」
「凄くな」
こう部下達に話した、そして。
彼は川崎球場が建て替えられることについて知った、だがそれからは。
仕事と家庭のことに没頭した、趣味の野球観戦は相変わらず関東の各球場で続けていった。そうして定年を迎え。
令和になってから孫の一人が独立して川崎で家族と一緒に住んでいるそこを訪問すると曾孫の男の子にこう言われた。
「ねえ、野球の試合やってるっていうけれど」
「野球?」
「うん、球場でね」
「球場ってもう川崎は」
「野球やってるわよ」
孫、もう結婚して母親になっている彼女が言ってきた。名前を菜月といって明るい顔立ちをしたショートヘアの女性だ。
「川崎でも」
「もうプロ球団ないのにか」
「だから社会人とかね」
「ああ、そっちの野球か」
「やってるわよ、アメフトとかゲートボールもね」
「やってるんだな」
「そうよ」
実際にというのだ。
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