第二章
[8]前話
「何処でもよね」
「そうなっているわ」
「そうね、透き通っていて映し出していて」
そうしてだ。
「きらきらしているわね」
「何処もね」
「何処もガラスね、何かね」
こうも思った、そして言った。
「水晶の街みたいね」
「ガラスが水晶だっていうのね」
「誰が言ったかしら」
それが誰かは覚えていない。
「けれどガラスって水晶にも見えるから」
「今はなのね」
「何処も水晶がある様なものね」
「そう考えると凄く奇麗ね」
同僚は私の今の言葉に笑って応えた。
「そうなるわね」
「そうよね、そう思うと疲れた時とかね」
「何処にでもあるガラスを見たら」
「水晶に包まれていると思えて」
奇麗でそして不思議な力があるというこの石にだ。
「幸せな気分になれるわね」
「そうね、じゃあこれからはいつもそう思ったらどうかしら」
「私達はいつも水晶に囲まれている」
「そうね」
私にこう話した。
「それでどうかしら」
「そうね、じゃあこれからはね」
「そう考えるのね」
「そうするわ、ステンドガラスはとびきりの水晶で」
こちらのガラスはだ。
「眼鏡やサングラスもね」
「全部水晶ね」
「そう思うわ、そうしたらね」
私は同僚に紅茶を飲みながら話した。
「これまで何気なく過ごしていたけれど」
「それはなのね」
「幸せに思えて来たわ」
「そうなのね」
「ええ、自然とね」
「それはいいことね」
「そう考える様にするわ」
こう言ってだった。
私は紅茶を手にお店の窓のガラスを見た、するとそこに映る私は何処か微笑んでいた。同僚の顔も。そしてそれからはだった。
私はガラスを見て時々水晶を意識する様になった、沢山の水晶で私の周りが飾られていると思えて。
それだけで幸せな気持ちになった、オフィスを家を行き来する日常もそんな風に思える時が出来ると自然とその分幸せになれた、些細なことだけれど私には大きなことだった。何処にでもあるガラスを水晶に思えるだけで。それだけで本当に大きかった。
そして結婚した時に彼にその話をすると彼も笑顔でこう言ってくれた。
「これからはガラスを見ると楽しくなるよ」
「水晶に囲まれていると思うとね」
「うん、不思議な水晶に囲まれて幸せになれる」
「そう思えてね」
何気ない筈なのにそう思うだけで天国の様な幸せな場所にいる、そう思えると生涯の伴侶になってくれた彼と話した、その時のガラスに映る私達の顔も笑顔だった。水晶には幸せが映し出されていた。
CRYSTAL HEAVEN 完
2021・1・3
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