第一章
[2]次話
蝙蝠博士
南アフリカのヨハネスブルグ野生動物獣医病院を経営しているカレン=ルーレンスは多くの野生から保護された蝙蝠を育てて自然に帰している、中には生後数日で母親とはぐれてしまった赤ん坊もいる。
そんな彼等をせっせと育て野生に戻しているが。
ある人はそんな彼女、まだ黒いところが残る白髪の中年のコーカロイドの女性である彼女に怪訝な顔で問うた。
「何でも年間数百匹の蝙蝠を保護して野生に戻しているとか」
「はい、そうしています」
「蝙蝠は飼育が難しいとのことですが」
「ですからかなり専門的な知識と技術が必要です」
ルーレンスもこう答えた。
「そして私にはです」
「その技術をお持ちですか」
「その自負があります、ですから」
「そうした活動をされていますか、蝙蝠は」
「よく怖いイメージがありますね」
「ドラキュラ伯爵等で」
「あれは映画でして」
ルーレンスはこのことを断った。
「実はチスイコウモリも」
「中南米にいるだけですね」
その人もこのことは知っていた。
「そうですね」
「そうです、基本人間に無害で多くの虫を食べてくれるので」
「むしろ人間にとって利益がある生きものですね」
「外見は不気味と言われますが」
ドラキュラ伯爵のイメージそのままにというのだ。
「その実はです」
「人間には無害で多くの虫を食べてくれますか」
「この南アフリカいえアフリカ南部は虫が特に多いので」
「危険な虫もまた」
「そうした虫達を食べてくれるので」
またこう言うのだった。
「これからもです」
「蝙蝠達を保護してですね」
「野生に帰していきます」
「そうされますか」
「そうしていきます」
こう答えた、そうして活動を続けていった。その中で。
ルーレンスはシドニーの屋内動物園に呼ばれ蝙蝠のことを動物園のスタッフ達に講義して細かい資料も渡した、そうして。
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