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ユア・ブラッド・マイン―鬼と煉獄のカタストロフ―
episode16『泣いた赤鬼』
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 生物的な鬼の印象はいささか薄れ、どちらかといえば鬼を象った鎧武者といった印象を受ける。だがやはり、漆黒に染まった結膜や、額から伸びる深紅の双角は人間らしからぬ異物感を際立たせていた。

「シン兄!」

「ケガしてない?」

「手もえてる!あつくないの!?」

 マナを皮切りに、続々と人混みの合間を抜けて兄弟たちが駆け寄ってくる。シンの変貌に驚いていたり、シスターの負傷に駆け寄ったり、眠るヒナミの顔を心配そうに覗き込んだりと、そのアクションは様々で、あんまりにもいつも通り。
 一度はあきらめたもの、永遠に失ってしまう筈だったもの。

 ヒナミが繋ぎ留めてくれたもの。

「わ。わ、シン兄?」

「どしたの……?」

 ぎゅっと、壊さないように。愛おしむように。手の届く限りのきょうだい達をいっぱいに抱きしめる。
 大好きだったのは知っていた。守りたいとも思っていた。

 でも。
 ずっと一緒に居たいと思うことができたのは、紛れもなく今が初めてだった。

「マナ、皆を連れて後ろに下がっていてくれるかな。僕は、あの悪い奴をやっつけてくるから」

「う、ん……出来る。出来るよ、シン兄」

「そっか、マナは偉いな」

 いつものように頭を撫でると、しかしマナの反応は少し違った。困惑と疑問が混じったような視線でシンの姿を見つめている。流石に無理もないか、と苦笑を零した。

「ごめんよ、この姿は怖いだろう」

「ううん、そうじゃないの。そうじゃなくて――」

「変身ヒーローみたい!」

 と。
 マナの言葉に割り込むように、隣に居たまだ幼い(きょうだい)が瞳を輝かせて叫んでいた。
 驚いて目をぱちくりと瞬かせる二人の様子にも気付いた様はなく、それに触発されたのかは分からないが、何人かの特撮好きの弟たちが興奮したように騒ぎ始める。あんまりにも状況を分かっていない様子の幼い彼等に、マナが堪えきれなくなったように「ぷっ」と小さく噴き出した。

 血にまみれた悪の象徴、かつての罪の具現。シンにとって、視界に入れる事すら苦痛にしかならなかった、あまりに醜い怪物の貌。
 その姿を前にして、“きょうだい”達は。
 マナは。

「そうだよ、怖くなんてない――かっこいいよ。シン兄」

 “びっくりしてただけ”なんて笑って付け加えるマナに、『なんだぁ』とでも返そうとして、けれど言葉にならなかった。
 自分でも不思議なくらいに、心が揺れていた。『すげー!』『かっけー!』なんて、子供じみた純粋な誉め言葉が、自分でも不思議なくらいに嬉しかった。

 いや、それもあるけれど、違う。きっと何よりも、この化け物じみた姿を見て、それでもシンを受け入れてくれているというその事実が、何よりも嬉しかっ
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