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MOONDREAMER:第一章(ノベライズ作品)
第一章 幽々子オブイエスタデイ
第8話 『魔王』光臨:後編
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うに、それはこうもりの形をとっていたのである。
 一匹なら可愛くも見えるこうもりだが、それらは無数のこうもりの群れと化していたのでその不気味さは一入であった。しかも体色は一般的なこうもりの黒ではなく、目に焼き付くような紅なのだから異質極まりない。
 レミリアの周りには彼等が魔王の使い魔のように展開していた。
「行け、私の僕たちよ!」
 その言葉と共にレミリアは両手を広げ、彼等に命令を下したのだ。
 バサバサって耳障りな羽音を出して、使い魔たちは主の命のままに獲物に飛びかかって行ったのだ。
「今までよりも遅いわね。それで天宇受売命の力を得た私を狙っているつもりかしら?」
「まあ、そう慌てなさんな」
 軽口を叩く依姫に対して、レミリアは落ち着いた様子で返した。
 そしてこの攻撃も軽やかにかわすべく、依姫は身を引いた。だが。
 レミリアはニイッと口角を上げてその様子を見ていた。
「!?」
 華麗にこの攻撃も回避したと思った依姫であったが、異変はすぐに起こったのだ。
 かわした筈のこうもり達が羽ばたきながら再び依姫へと飛び掛かり襲ってきたのだ。
「何のためにこうもりの形をしていたと思ってたんだい?」
「……成るほど、そういう攻撃もあるって事ですね」
 素直に感心しながら依姫は言った。だが彼女は動じていなかった。
「ですが、天宇受売命の力は守りだけにあるのではありませんよ」
 その言葉に続いて、依姫は鞘から刀を引き抜いたのだ。そしてこうもりの一匹目掛けてそれを振りかざした。
 バシュウっと弾けるような音と共に刃の餌食になったこうもりは再び霧となってかき消えたのだった。
 そしてステップを踏み別のこうもりにも斬りかかり霧へと還したのだ。
 更に軽やかに踵を返して他のこうもりも斬っていった。その様は、まるで宙に舞った砂の如く掴み所のないものであった。
『剣の舞』。その表現以上にしっくり来るものはないだろう。
「やるな……」
 これにはレミリアは素直に驚くしかなかった。
「はっ!」
 刀が振り抜かれ、こうもりが真っ二つにされ消し飛んだ。──今のが最後の一匹だったようである。
 そして依姫は全てのこうもりを仕留めたのであった。
「最後は親玉ね」
 使いの魔物を倒した依姫は、次に傘を指し宙に浮いているレミリアへと狙いを定めた。
「だがここまでどうやって来る?」
 しかしレミリアは冷静であった。空を飛ぶ事が出来る自分の方に分があると。
「甘いわね」
 依姫はそう言った。その言い方から、負け惜しみではないだろう。
 そして腰を落とし両足を踏み込んだのだ。
「はあっ!」
 そして掛け声を上げると、体のバネを使って──そのまま宙へと跳躍したのだ。
「!!」
 今度こそレミリアは驚愕した。完全に相手を空中への攻撃
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