第一章 幽々子オブイエスタデイ
第5話 気高き龍
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『──依姫は、豊かの海に現れるであろう敵を迎え撃つ。
そこに現れる敵は囮です。
しかし、その囮は貴方の潔白を証明するのに役立つでしょう』
依姫は咲夜に刀を向けながら、八意の言伝を想起し物思いに耽っていた。
この戦いをやり抜けば、晴れて自分は安泰を得る事が出来る。まずはこの一戦を──。
「どうしました?」
思考の海に浸る彼女を咲夜の言葉が引き戻した。
「貴方から掛かってこなければ無限にまちますよ?」
余裕の表情で咲夜は言った。
それに対して意識を現実に戻された依姫は咲夜に返すべく口を開く。
「貴方は……」
言い掛けてながら依姫は左手を盛大に天にかざし、
「さっき私の事を、手癖が悪いって言ったわよね」
と続けた。
それは先程も持ち出した事であった。どうやら依姫は意外と根に持つタイプなのかも知れない。
そこで場の空気が変わった。何やら暗雲が辺り一面に広がったのだ。
そして、スコールのようなおびただしい豪雨が辺りを襲った。
「!!」
突然の事態に咲夜は当然驚愕してしまう。
だがそれだけではなかった。今度は彼女の周りを激しい稲妻が轟いたのだ。
更に異常事態は起こっていた。──彼女の眼前には八ツ首の炎で出来た龍とでも呼ぶべき存在が立ちはだかっていたのだ。
「『火雷神』よ。七柱の兄弟を従え、この地に来たことを後悔させよ!」
主からそう言伝を受ける火雷神はさながら月を護る番犬というべき役割を与えられていた。──いや、この場合は『番龍』とでも言おうか。
だが本当に後悔させる気は依姫にはなく、いわば前口上であった。相手を精神的に追い詰め尋問する手段であってはないと思っているのだ。──神の力も『スペルカード戦』も。
身構える咲夜。だがそれは、炎熱という名の猛毒を携えた大蛇の群れの前には無駄な抵抗であった。
次々と炎の大蛇は古代都市アトランティスを一夜にして沈めた津波の如く咲夜に襲いかかった。
そして首が全て獲物に飛び掛かると、轟音を鳴り響かせ大規模な炎のハリケーンを巻き起こしたのだ。
このような猛攻を喰らえばただでは済まないだろう。だが──。
「貴方は、不思議な術を使うのね」
そう言う依姫の背後を咲夜は取り、ナイフを突き付けていたのだ。
「さっきも見せたでしょ。瞬間移動のイリュージョン」
それを聞きつつも依姫の視線は咲夜のスカートに付いた焦げ目を見逃してはいなかった。
「あと、おまけ」
咲夜に言われて依姫は気付いた。彼女の頭上一帯を無数の銀のナイフが埋め尽くしていたのを。さながら恐れを知らぬ龍が、その自慢の爪と牙を剥き立てるように。
それを見ていた玉兎全員に戦慄が走った。依姫の表情は読み知れない。
そしてガトリングガンからばら蒔かれた弾丸のように大量に掃射され
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