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風呂の中の石
第四章

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「心もあり動くこともだ」
「出来るのか」
「左様、石も長くあると心が備わってな」
 そうしてというのだ。
「動くことも喋ることもだ」
「出来るのか」
「そうだ」
 そうなるというのだ。
「付喪神と同じだ」
「あれとか」
「そうだ、だからわしもな」
「長くこの世にあってか」
「そうなったのだ」
 こう想念に話した。
「これでわかったな」
「うむ、しかしな」
「それでもか」
「いや、まさか石が動くとは」
 このことにだ、想念は驚きを隠せないまま言った。驚いていることに何があっても冷静であるべきなのが僧侶であり自分はまだ修業が足りないと思いながら。
「そして湯を楽しんでいるとは」
「思わなかったか」
「霊か狐狸か」
 そうしたものと、というのだ。
「思っていた」
「そうだったか」
「全くだ、しかしこれでわかった」
 どうして誰もいない風呂場から声がするかだ。
「よくな」
「そうか」
「そなたが声の主とな」
 石がというのだ。
「わかった、これで謎は解けた」
「そうなったか」
「後で主殿に話そう、しかしお主は話題になりたくないならな」
 想念は石にこうも話した。
「もうな」
「喋らないことか」
「そうだ、そうしてだ」
「風呂を楽しんだ方がいいか」
「うむ、そうすることだ」 
 こう注意するのだった。
「よいな」
「話題になっているのか」
「実はな」
 想念は石にその話のことを話した、石もその話を聞いて述べた。
「そういうことだったか」
「左様、大坂にまでな」
「話が及んでいたか」
「そうだったのだ」
 石にこのことも話した。
「これがな」
「そうか、ではな」
「これからはか」
「人には聞かれぬ様にな」
 喋ってもというのだ。
「決してな」
「そのことに気を付けてか」
「湯を楽しむといい」
 温泉、それをというのだ。
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