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とある3年4組の卑怯者
15 恋路
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 藤木は笹山と初めて接触し、彼女に惹かれた時を思い出していた。
(初めて笹山さんを好きになったのは1年生の頃だったな・・・)

 2年前、当時1年2組の藤木茂は運が悪いと言われていた。永沢とは彼から、自分にだけ弟か妹ができると伝えたことから親友とは思っていたが、永沢からは嫌々付き合っていると嫌味を言われることが多かった。
 クラスメイトの誤解で卑怯と言われたことも何度かあった。卑怯がこのころから藤木のもう一つの名前と化しつつあった。そのせいでいい友達が中々できずに性格がだんだん暗くなり学校生活が苦痛に感じた。
(せっかく、クラスの皆の名前をみんな覚えたのに、どうしてもっといい友達ができないんだろう・・・)

 ある時、藤木は廊下を歩いていた。その時、後ろから急に誰かが自分の尻に蹴りを入れた。激痛で泣くしかなかった。
「そこに立ってちゃ邪魔なんだよ、ボケェ!!」
「だからって蹴らなくてもいいじゃないか・・・」
「うるせえ!!ボケーっと歩いてんじゃねえ!!」
 しばらく立てなかった。藤木は泣いたが、心配してくれる友達がいなかった。その時、一人の女子が気の毒そうな表情で歩み寄ってきた。自分のクラスの女子ではなかった。
「大丈夫・・・?」
 その女子は優しく話しかけた。
「後ろから蹴られたんだ・・・」
「きっとウチのクラスの堀内君ね。あの子本当酷いことをするのよ」
 女子は涙を拭いてとハンカチを差し出した。
「あ、ありがとう、優しいね・・・」
「そうかな・・・」
「うん、だって僕には友達が少ないし、運が悪いから皆に避けられるし、それに卑怯者って呼ばれるんだ」
 藤木は自分のことをさらけ出した。
「そうなの、何だか可哀想・・・」
 女子は藤木に同情していた。自分の気持ちを理解(わか)ってくれている・・・。そして卑怯者と呼ばれる自分を心配してくれるなんて・・・。こんなに優しい子に会うのは初めてだと藤木は思った。やっと立てるようになると、当時の2組の担任の先生がちょうどやってきた。女子は事情を説明してくれた。そして笑顔で藤木に顔を向けた。
「元気出してね。それじゃ、またね」
 女子はそう言って自分のクラスの教室に戻っていった。藤木はその女子の美しい笑顔と優しさに惹かれていた。
(あの子と友達になれたらいいのに・・・)
 藤木はその女子の事をずっと考えていた。

 数日後の登校中だった。前に一人の女子が目に入った。あの時の女子だった。
(お礼を言おう・・・!)
 藤木は思いきって話しかけた。
「あ、あの・・・!」
 女子が振り向いた。
「君はあの時の・・・?」
「この前はどうもありがとう・・・」
「どういたしまして」
 女子は微笑んだ。
(か、可愛いなあ・・・)
 藤木は照れた。
「あ、君の名前は
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