暁 〜小説投稿サイト〜
猫のきおく
シーン9

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 今夜は夕食を済ませて、子供たちはそれぞれの部屋にこもってしまった。食卓ではお父さんが独りプレートで肉を焼きながらビールを飲んでいる。お母さんは風呂にでも入っているんだろうか。俺はその光景を少し離れてなんとなく見つめていた。つまらないので、かまいたくなったのか、肉のかけらをこちらに差し出して、「ほいっプチ」と言って珍しく触れ合ってきた。俺はもちろんミャーとお愛想を言いながら足元に駆け寄ってむしゃむしゃと食べた。うまかった。この人は普段俺が何を食べているのか知っているんだろうか。とか思いつつ。

 「うまいか」と言いながらもうひとかけくれた。次にくれたのはにんじんのひとかけだった。それもとりあえず食べた。肉の匂いもしたし柔らかいし、まあまあかな。すると次もにんじんだった。我慢して食べて、もうこれ以上はたまらんと思って、その場を離れた。「そうか、お前もにんじん食べるんだ」とか勝手なこと言いながらビールを楽し気に飲んでいた。

 その時、お母さんが頭からタオルをかぶって部屋に入ってきた。すぐさま、「臭いこもるから窓開けてよね」といいながら、ベランダ側の窓を開けて、「ああいい風が入ってくるわー」と夜空の月を見ていた。するとお父さんがその場しのぎかもしれないが、「プチがにんじん食べるんだぞっー」と・・・なんてこと言うんだ。そんなこと、植え付けたら次の日からの俺のご飯がにんじんになってしまうかもしれないんだぞ。じょうだんじゃぁないよう。俺は肉が好きなんだよぅ・・・。
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