第二章
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「いいかと」
「わかった、ではな」
家光は天海の言葉に頷いた、そうしてだった。
彼に蛇五婆の件を任せるとした。すると。
彼は若い弟子を連れて江戸から越前に着いた、そして。
越前の藩主に事情を話すと快く応じてくれて泊まる場所まで用意してくた。そうして風呂にも入ったが。
風呂は温泉だった、空海はその湯舟の中で共にいる弟子に言った。
「特に難しいことではない」
「この度のことは」
「上様に申し上げたが悪い妖怪ではない」
その蛇五婆はというのだ。
「だからな」
「怯えることはないですか」
「左様、お主は拙僧がすることを見ておくのじゃ」
その皺の多い髭を丁寧に剃った顔で述べた。
「これからな」
「それでは」
「妖怪にも心がある」
天海は弟子に話した。
「そのことを見せよう」
「妖怪にもですか」
「人や獣と同じくな」
「妖怪もですか」
「そうじゃ」
こう言うのだった。
「そのことをな」
「拙僧は観ますか」
「うむ」
「そうしてですか」
「学ぶといい」
「妖怪について」
「左様、妖怪を恐れる者が多いが」
天海は弟子に穏やかな声で話した。
「むしろ人の方がな」
「恐ろしいですか」
「大坂のお袋殿であるが」
豊臣秀頼の母であった茶々のことを話した。
「あの方の妄執は凄かった」
「何でも権現様に丑の刻参りをしていたとか」
「憎しみのあまりな」
「そうでしたか」
「妖怪より人の方が怖い、怨霊がそうであろう」
「言われてみますと」
「それがこの度のことでそなたにもわかる」
こう言うのだった。
「だからよく観ておくのだ」
「わかりました」
弟子は天海の言葉に頷いた、天海は風呂でよく温まりかつ身体も清めた。そのうえで蛇五婆がいるという山に弟子を連れて入った。
そして妖怪が出る場所に行くとだった、そこには。
確かに粗末な着物を着た老婆がいた、左手には青い蛇右手には赤い蛇がいる。老婆は天海達を見て睨んできた。
だが天海は落ち着いて妖怪に問うた。
「蛇五婆であるな」
「それがどうしたのじゃ」
「お主のことはわかっておる」
妖怪の前に来て言った。
「もうな」
「わしのことがか」
「蛇五右衛門殿のこともな」
それもというのだ。
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