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MUV-LUV/THE THIRD LEADER(旧題:遠田巧の挑戦)
8.104訓練分隊W
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状況は時代劇のような一対多の剣術戦である。巧に掛かっていく歩兵。所詮は訓練兵と巧を侮っていた歩兵たちであったが誤算があった。それは訓練兵にも近距離攻撃できる手段があったということだ。これまで仕留めてきた104分隊は最後まで銃を握りしめ抵抗していた。ゆえに近接戦に持ち込んでしまえば容易く倒すことができた。しかし巧は斯衛の柳田から剣を習い、最後の訓練では門下生多数を相手取り打ち破っている。油断した歩兵は巧の正面打ちを防いだところに中段蹴りをくらって吹っ飛ぶ。
 そして巧の眼の前には石橋がいた。



 石橋は眼前で繰り広げられる戦闘に我が目を疑った。銃を捨てて剣を抜いて斬りかかってくる訓練兵を嘲笑ったが、その腕は訓練兵のそれではない。剣術の腕は正規兵並、しかも剣術から体術につなげる一連の動きは滑らかで、実戦慣れしているように見えた。そしてこの状況に委縮していない胆力。普通の訓練兵じゃない。
 そして相手はあっという間に目の前の歩兵をけり飛ばし、こちらに向かってくる。だがここで引くわけにはいかない。自分にも意地というものがある。幾多の死線を潜り抜け、泥を啜り、BETAと戦い、多くの仲間を失って…。そして歩兵というだけで軽んじられる日々。そんな自分たちが苦労知らずの衛士候補生に負けることなど断じて許せない。
「調子に乗るなよ糞餓鬼があぁぁ!!!」
もはやこれは演習ではない。自分の矜持をかけた真剣勝負なのだ。



 試験終了間近、脱落した104分隊の面々は緊張した様子で試験終了の報を待っていた。巧は生き残っているだろうか。当初の計画は大きく狂い、結局巧頼りになってしまってしまったことを田上は反省していた。田上が敗れてから三日半。その間田上は一食も一睡もしていない。分隊長でありながら一番初めに脱落し、後から来る隊員たちに何も声をかけることができず、そして最年少である巧に全てを託すという未熟。そんな自分を許せるわけがない。
(もし演習が失敗しても、巧だけは合格にしてもらえるように直訴しよう。巧はこんなところで足踏みをしている奴じゃない。俺とは違うんだ…。)
田上がそう決意したとき教官が演習終了を知らせた。
「演習終了だ。結果は遠田が戻ってきてから伝える。それまでは各自待機だ。」
「教官!遠田は大丈夫なんですか?」
田上はそれだけが気がかりだった。演習の合否、それを気にする資格は自分にはない。ただ未来のある巧が怪我を負って、それで衛士への道を閉ざされたとなってはもう償いきれない。
「安心しろ、かなり手ひどくやられたようだが許容範囲内だそうだ。だが今気絶をしているらしくてな。遠田が目覚めて一息入れたら結果を言い渡す。解散!」
どうやら巧は無事らしい。しかし手ひどくやられ、気絶しているということは演習自体はダメだったということだろう。
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