第01部「始動」
第08話
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は後ろを振り向かずに空を見上げたまま…後ろ手に手を組む。
様式美は大事なのだよ。
「お呼びでしょうか」
「うむ。待っていたよ」
澄んだ声が部屋に響く。この声を聞くと少し感慨深くなる。あの頃を思い出す…いや、今では少し違うな。
「それで話とはなんでしょうか?」
「…時に、おじいちゃまと呼んではくれないのかね?」
「………あの」
何度目になるか分からない問答を繰り返す。根負けして今度から呼んでくれるのならば、二つ返事で何でもする自信がある。
「今日呼んだのは次の命令を与える事。そして、伝えないといけない事がある」
「…はい」
「うむ…まず、今回の件ご苦労だった。君たちの働きによって犠牲を最小限に抑えて鎮圧することが出来た」
人の噂も七十五日。クーデターが鎮圧されて既に日は経っている。
今ではそんなことがあったのかと、テレビやニュースで話題に上ることも少なくなってきた。あの事件の裏で行われていた行為についても公表されることはない。
後ろに佇む一人には以前から、その件で報告を受けている。
自分の能力を使って、ある実験についての証拠を集めその結果を立証する為に…その報告を受けるたびに胸の奥で痛みが走る。
彼女自身。その行為にどれだけの意味があるのか分かっているだろう。彼女は聡明で理解力もある。
だが、諦められない。凛として落ち着いた雰囲気を出しているが、彼女は芯を揺り動かされれば熱を持つことは明らかだ。
「明日より君たちには、コロニーを巡って火星の後継者の捜査と逮捕を頼みたい」
「はい」
声に少し嬉しさを感じる。やはり考え直した方が良かったかも知れない。
彼女の脳裏には、あの青年…彼の姿が写っているに違いない。
「加えてコロニー襲撃犯の捜索も同時に行ってもらうことになった」
「司令」
「…現状で、コロニー襲撃と火星の後継者は接点が見つかっていない。あの黒いエステバリスのパイロットは最重要参考人…として捜索されることになった」
本音で言えば、コロニー襲撃時の映像記録は残っていない。実際にコロニーを爆破したのが、あのエステバリスなのかは不明だ。しかし、そんなものは関係ない。今のままだといずれそれも作られる。
そう、作られるのだ。
「…以上だ」
「はい…」
さっきと違って力のない返事。それが迷いを誘う。言うべきか…言わないほうが良いのか…
「それとユリカのことなのだが」
「それは私が説明しましょう」
こちらの声をさえぎって、テレビのディスプレイが付き声が響く。
「…さん」
「少し疲れているから詳細は後でレポートするわね。結論から言うと、彼女は大丈夫。ちゃんと安静にして療養すれば回復するわ」
「そ、そうか!」
その言葉に安堵する。
彼女は遺跡施設の第一人者とも言える。
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