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MOONDREAMER:第二章〜
第三章 リベン珠
第37話 完伝と想い出の日
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「う〜ん……」
 心地良い気だるさと共に、勇美の脳が夢の世界から覚醒していく。部屋には日の光が綺麗な斜めの直線を描いているのが芸術的である。
 そして、寝ぼけ眼であるものの勇美は布団からその身を這い出させて目覚めの準備をしていく。
 このような朝を再び迎えられるようになってから少しの時が経っていた。そう、勇美はあの短くも濃厚な内容であった月への旅を終えた後は、無事に永遠亭での平穏な毎日を満喫出来るようになっていたのだった。
 そして見事に布団から脱出するという偉業を成し遂げた勇美は、襦袢を脱ぎ手際よく普段着のミニ丈の和服へと着替えていったのである。
 朝の準備の第一段階をクリアした勇美の脳内に、徐々にこの上ない高揚感が沸き出てくるのであった。何せ今日は……。
「今日は、ねんがんの私の15歳の誕生日会だから楽しみだね」
 と、いう事であった。そして、誕生日会だから殺してでもうばいとられる心配もないから安心だろう。例外的に他人の誕生日会を奪い取り自分の物にしてしまうケーキ型の怪人もいるにはいたが。
 ともあれ、そんな事は勇美には関係なく、彼女は今日繰り広げられる自分の誕生日会を今から首が長くなる程に楽しみな思いなのであった。
 そして、そんな心弾むような気持ちの下に着替えを終えた勇美は、まずは朝の腹ごしらえという事で食堂へと向かっていったのだった。

◇ ◇ ◇

 その後は彼女自身も永遠亭で主催してくれる自分の誕生日会の準備を手伝ったのだった。その事は自分の為にそのような催し物を開いてくれる皆へ報いる為と、日頃自分の面倒を見てくれている事への恩返しの意味も籠められていたのだ。
 そんな勇美に対して永遠亭の皆は、主役がそのような事をするものではないという気持ちを多少抱きながらも、律儀な勇美の気持ちを汲み取るべく、快く手伝いをしてもらったのであった。そこにはここまで一年近く接してきた勇美と永遠亭の面々の以心伝心の思いが存在していたのである。
 そうこうして準備も整い、後は来客を迎えるだけとなっていた。
 そして、勇美はその時を待ちながら、今までの人生で今日程待ちわびる誕生日会は無かったと思い返すのだった。
 その理由は無論、勇美の母親にあるのである。確かに彼女は今まで欠かさずに誕生日会を家で開きはしてきた。だが、それは純粋に勇美の為ではなく、持て成す客人たる自分の交友関係の者達へのアプローチと、誕生日を祝う自分が好きという自己陶酔の為であり、断じて我が娘の為ではなかったのだった。
 それに対して、今回の誕生日会はどうだろうか? この催し物は決して勇美からお願いした事ではなかったのである。完全に永琳や輝夜といった永遠亭の面々から自発的に提案された事なのであった。
 だから、勇美はこの上なく嬉しかったのである。純粋に自分の為に催し
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