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後ろ足がなくなっても
第一章

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            後ろ足がなくなっても
 ポーランドでの話である。
 コーニンに住んでいるサシュ夫婦はこの時郊外でサイクリングを楽しんでいた、夫のウーカシュも妻のナタリアも金髪碧眼で共に色素が薄い感じだ。二人共仕事は学校の先生だ。穏やかな表情で二人共背が高くスタイルがいい。
 二人はそのまま自転車で道も走っていたがふと妻が道の脇を見て言った。
「犬がいたわよ」
「犬?」
「ええ、戻りましょう」
 こう夫に言ってそこに二人で戻った、すると。
 顔だけ出した黒と茶色の毛の中型犬がいた、随分気弱そうな感じだ。夫はその穴から顔だけ出している犬を見て妻に言った。
「野良犬から」
「そうみたいね」
「野良犬だったら保護しないとな」
「そうね、それじゃあね」
「まずは保護をして」
 そうしてというのだ。
「それでね」
「病院にもね」
「連れて行こう」
「それがいいわね」
 妻も頷いた、そうしてだった。
 二人は犬に穏やかな声をかけてだった、保護したが。
 穴から出た彼を見てすぐに気付いたことがあった。
「この子後ろ足が悪いわね」
「それもかなりな」
「怪我してるわ」
「大丈夫かな」
「すぐに病院に連れて行きましょう」
「最初からそうするつもりだったしな」
 二人でこう話してだった。
 すぐに犬を動物病院に連れて行ったが獣医はその足を見て言った。
「怪我が酷くて壊疽も起こしていて」
「それじゃあ」
「その足は」
「はい、切るしかです」 
 こう二人に話した。
「ないです」
「そうですか」
「もう足は駄目なんですね」
「幸い他に怪我はなく病気もないので」 
 獣医はさらに話した。
「治療を受ければ普通に暮らせます」
「そうですか」
「大丈夫なんですね」
「保護されたのですね」 
 獣医はその犬を見つつ夫婦に問うた。
「そうですね」
「はい、道路の脇にいました」
「穴からお顔だけ出していました」
 夫婦ははっきりと答えた。
「そうしていてです」
「保護しました」
「そうですね、若しお二人に余裕があれば」
 それならというのだ。
「家族に迎えてくれますか」
「はい、もう一匹いますが」 
 それでもとだ、夫は獣医に答えた。
「家計も大丈夫ですし」
「そうさせてもらいます」
 妻も答えた。
「是非」
「そうしてくれますか」
「そうします」
「この子は私達の家族になります」
 今度は夫婦で答えた、そうしてだった。
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