暁 〜小説投稿サイト〜
歪んだ世界の中で
第九話 決意を述べてその十
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「それでもね」
「それでも?」
「今は違うよ」
 こう言えたのだった。世界が広くなったからこそ。
「本当にね。そうだよ」
「そうですね。今の遠井君の世界は」
「学校と家だけじゃないから」
 自分からだ。希望はまた言った。
「他にもね」
「僕も家もありますし」
「千春ちゃんもいるから」
 だからだ。余計にだというのだ。
「もう辛くはないよ。それにね」
「家はもうですね」
「本当にね。出るよ」
 そうするとだ。出るとだ。希望は言い切った。
「もうあの家には何も未練もないし」
「ですか」
「いても嫌な気分になるだけだし」
「そうですね。あのお二人ですと」
 真人も希望の両親のことは知っていた。それでだ。
 目を伏せさせてそれからだ。希望に言ったのである。
「そうなっても当然ですね」
「だからもう出たいんだ」
 かなり切実な顔でだ。希望は真人に話した。
「親と一緒にいたくないんだ」
「暖かくない場所からは」
「寒いのはもう嫌だよ」
 希望の家はそうだというのだ。夏であっても。
「寒くて冷たい場所はもう出て」
「暖かい場所に」
「そう、いたいから」
「では家を出られる為にも」
「勉強頑張るよ」
 結果を出してだ。その結果を突きつけて家を出る為にだった。
「その為にもね。それで」
「それで、ですか」
「家を出ても。それからもね」
「勉強の方はですね」
「頑張るよ。もう二度と誰にも馬鹿って言わせないよ」
「そうしますか。では」
 真人は微笑みだ。こう希望に言って励ましたのだった。
「頑張って下さいね」
「有り難う。それにしても」
「それにしてもとは?」
「友井君はいつも僕の味方でいてくれるけれど」
 このことについてだ。希望は言ったのだった。今度は。
「それはどうしてかな」
「いつも遠井君にいいことを言ってはいませんよ」
「そうなのかな」
「はい。遠井君が間違っていれば」
 その時はだというのだ。
「僕は注意していますよ」
「そうしているかな」
「ずっとそうしていましたけれど」
「そうだったかな」
「近頃は。遠井君は間違っていないので」
「だからなんだ」
「注意はしていなかったんですよ」
 そうしていたというのだ。今の希望は。
 そしてそのうえでだ。彼は言ったのだった。
「悪いことはしていないので」
「だからだったんだね」
「そのことは気付かれてなかったですか」
「いや、言われてみれば中学までは」
「そうでしたね。僕は遠井君に注意することもありましたね」
「厳しいことも言ってくれたよね」
「遠井君も僕にそうし
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ