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息子が残した犬
第一章
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               息子が残した犬
ジャスティン=ロリンズはアメリカ陸軍第八十二空挺部隊の副操縦士だ、年齢は二十二歳であり逞しい身体に灰色の目を持っている青年である。
 その彼が実家に画像を送ってきたが。
「ああ、これはな」
「可愛い犬ね」
 両親はその画像を見て話した。
「随分と」
「そうだな」
 見ればそこには垂れ耳で耳と目の辺りが黒い白地の子犬がいた。
「賢そうだしな」
「大人しそうね」
「イラクにもこんな犬がいるんだな」
「あの国は今も大変だし」
 混乱は今も続いているのだ。
「物騒だから」
「しかもイスラムは犬より猫だからな」
「そうらしいわね」
「犬の唾液は嫌われるんだ」
 不浄とされていてだ、これは狂犬病を警戒してのことだ。
「それで猫なんだ」
「猫は随分好かれているのよね」
「ムハンマドからな」
 コーランにも猫の虐待を戒める文章がある程である。
「そうなっているんだ」
「だからよね」
「ああ、猫の方が可愛がられていてな」
「犬は嫌われていて」
「それでだよ」
 その為にというのだ。
「犬は少ないのに」
「こんな子もいるのね」
「そうだな」 
 息子が抱いて顔に寄せているその犬を見て言った。
「よかったらうちに飼いたいな」
「そうよね」
「ああ、それじゃあな」
「ジャスティンに今度言いましょう」
「戻って来る時はな」
「その犬も一緒にってね」
「うちに飼おうってな」 
 こう言おうと思った、次のSNSでの連絡の時に。だが。
 その次の時は来なかった、この画像を送ったすぐ後にだ。
 ジャスティンは地雷を踏んでしまい死んでしまった、両親は息子の突然のしかも若過ぎる死に嘆き悲しんだ。
 それは我が子の葬儀を終わってもだった。
「軍にいるんだ」
「そして危険な場所にいたから」
「それは当然だ」
「ええ、けれどね」
「自分達の子供が亡くなるとな」
「こんなに悲しいものなのね」
 悲しんで言うばかりだった、だが。
 二人はこうも思った。
「けれどな」
「何時までも悲しんでいられないし」
「何とか気を取り戻さないとな」
「そうね」
 二人で話した、そして。
 そのうえでだ、夫婦で話した。
「あの犬を引き取るか」
「ジャスティンが撮ったあの子犬をね」
「そうしよう」
「イラクにいるあの子を」
「画像はあるしイラクにいることはわかってる」
「軍にもつてがあるし」
 軍にいたジャスティンが撮影しているから間違いなかった。
「それじゃあね」
「何とかして引き取ろう」
 こう決めて軍にもお願いをしてだった。
 そしてその子犬を探してもらって家にまで送ってもらった、二人はその犬をすぐに家族に迎えて名前はヒーローにした。

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