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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
閉会〜金帰火来には遠すぎる〜
分かたれた家〜ティアマト民国〜(下)
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ほど馬力がありタフな『ビジネスマン』である。農地持ちの実家を飛び出したかと思えばバーラトで怪しげな退役軍人たちをかき集めた興行をはじめ、そうかと思えばエルファシル共和国のアプス自治領へ渡り、食品加工業を立ち上げ、パフォーマンスがてら閉鎖的なヴァンフリートへ乗り込み、売り込みをかけるという根っからの派手好きなビジネスショーの達人である。
 皮肉なことであるがティアマト民国という知名度を若い世代に知らしめたのはこの男の騒がしさ(ネームバリュー)によるところが大きい。
 そして圧倒的な知名度と若者受け、そして『ティアマト・ブランド』の復活という手土産を旗印にティアマト主要産業、一次産業と食品工業界の圧倒的支持をもって、政治的な経験を一切持たないこの男は、3年前にティアマト民国参事会議長――すなわち国家元首となってしまった。そして翌年の任期満了後も2期目は堅いだろうといわれている。

「異議なし」「異議なし」
 参事達に続き、自身もまた異議なし、と唱和しながらもアリシアはため息をついた。

 彼自身の知名度をティアマト民国の政治家たちも利用してきた。名だけならまだしも、いつの間にか『ティアマト』意識(ナショナリズム)の象徴として『実』が伴ったことはティアマト政界でも危機感を覚えているものは多い、その一人がアリシアである。

「いいだろう!それでは素晴らしいことに我らの新作、『キシャルの麦』を利用した糧食はすでにアスターテへの納入が決まった!更に文化交流事業において観光資源としてアスターテからも指定を受けられる!!」
おぉ!と参事会の財務担当と産業開発担当が歓声を上げる。

「また一つデッカい取引(ビッグディール)が決まったぞ!!ティアマト・ブランドは銀河一だ!」
 派手好きで突飛なことを言って目立つ。遠慮も呵責もなしにビジネスでねじ伏せる。
理想化された開拓と飛躍の時代の合言葉、【古き良き自由の夢】(グッド・オールド・リバティ・ドリーム)の体現者、とすら受け止められた。
 (直接的には)軍も関わらず、ましてや帝国からフェザーン経由で入ってくる廉価な商品相手に”質で勝つ”ということすらも同盟市民たちの琴線に触れたのだ。
 ティアマトの全土の選挙に勝つということは全国的な知名度を持つというということに等しい――アリシアは軍の女性将兵の為の改革運動に携わり、女性弁護士として知名度を上げていた。
 敵を打ち倒し、笑い、喝采を受ける。あぁそれはよいことだ――政治でなければ。
 政治とは敵を打ち倒すものではない。そうではない、【打ち倒した後】こそが政治の本領である。だからこそ終わりはないのだ、闘争は義務と人は言う、なれば闘争は政治の一過程に過ぎず、政治とは人の営みそのものである。

 自慢げに成果と儲けを何に使わせるかをまくした
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