第二章
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「歯も胃もね」
「悪いんだな」
「もう身体がかなり悪くて治療して大事に育てても」
そうしてもというのだ。
「あまりね」
「長く生きられないかも知れないか」
「そう言われたわ。それで蚤だらけだったけれど」
「それはか」
「洗ってもらったから」
見ればそれで奇麗になっていた。
「けれどね」
「目も耳も悪くてか」
「他のところもそうした子よ」
「そうか、けれど家族になったんだ」
それならとだ、夫は妻に言った。
「だったらな」
「この子の最期までね」
「一緒にいないとな」
「駄目ね、じゃあ」
「ああ、こいつの名前はルースター＝コブバーンだ」
夫は強い声で名前を言った。
「この名前は」
「映画の登場人物の名前ね」
「それにしよう、じゃあな」
「ええ、最期までね」
「一緒にいるぞ」
その犬ルースターと、と言ってだった。
夫婦は彼との生活をはじめた、障害を複数持っているルースターはそれと戦いながら生きていった。
身体を満足に動かすことも食べることも難しかった、だが夫婦はその彼にいつも親身に接して優しく世話をした。ルースターはその中で生きていき。
日々楽しく生きて目が悪く耳が聞こえずとも夫婦が声をかけると顔を向けて尻尾も振った。毎日を楽しく生きていた。
そうして天寿を全うしたが。
夫は彼を見送ってから妻に言った。
「ルースターから沢山のものを貰ったな」
「ええ」
妻は夫のその言葉に頷いた。
「本当にね」
「出会えてよかった」
「家族になってくれてね」
「あの時俺達は塞ぎ込んでいた」
二度の流産、それでだ。
「けれどそんな俺達をな」
「ルースターは救ってくれたわ」
「間違いなくな、だからな」
「ルースターとのことをずっと覚えていてね」
「そしてな」
そのうえでというのだ。
「これからもな」
「あの子が教えてくれたものと一緒に暮らしていきましょう」
「そうしよう」
二人で笑顔で話した、そしてルースターの写真を家に飾った。二人はその写真を見てこれからのことを詳しく話した。もう二人は打ちひしがれておらず未来を見ていた。
夫婦の子供 完
２０２１・２・２４
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