第一章
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温もりに出会った犬
その犬はボランティア団体の施設の中で非常に悲しい顔でいた、やや耳が垂れた茶色の毛の中型犬である。性別は雄である。
その犬を見て団体の人達は言った。
「これまで幸せだったのに」
「それが急にだから」
「飼い主の人が亡くなって」
「ここに来てずっとああですね」
「悲しい顔をして」
「飼い主さんを待っていますね」
「犬は今を生きるから」
犬の習性の話もされた。
「今どうかで」
「飼い主の人がいなくなって」
「そのことを受け入れられないんですね」
「もう絶対に来ないのに」
「あの子の前には」
「それでも待っていて」
「悲しい顔をしていますね」
亡くなった飼い主がどうしていなくなったかわからないでいたのだ、それでその犬はずっと悲しい顔をしていた。だが。
その犬を引き取りたいという人が出て来た、田村祐樹という人でサラリーマンをしていた。家族もいる。
恰幅のいい七三分けの髪の中年男性だ、彼は施設に来てその犬のことを聞くと考える顔になって言った。
「そうですか、今もですか」
「飼い主さんを待っています」
「ずっと一緒にいて大事にしてくれた人を」
「そうしています」
「わかりました、それならです」
彼は施設の人達の話を聞いて言った。
「私と家族で」
「大事にしてくれて」
「そうしてですか」
「幸せにくてれますか」
「そうしてくれますか」
「はい」
約束する返事だった。
「そうさせてもらいます」
「私達に出来ることなら」
一緒にいる妻の彩香も言ってきた、肉付きのいい中年女性で童顔だ。髪の毛は黒くショートヘアにしていて顔も丸い。
「何でもさせてもらいます」
「では宜しくお願いします」
施設の人もこう言ってだった。
犬を夫婦に引き渡した、夫婦はすぐに犬を家に連れて帰り名前をスポーキーと名付けた、スポーキーは家に来ても悲しい顔だった。
その彼を見て夫は言った。
「やっぱり前のご主人のことが忘れられないんだな」
「そうね。もうお亡くなりになったのよね」
「そのことはわかっているみたいだけれどな」
「忘れられないのね」
「物凄くいい人だったんだな」
夫は彼の前の家族のことを思って言った。
「だからな」
「今も慕って」
「それでお亡くなりになってもな」
「忘れられないで」
「ずっと慕っているんだ」
「そうよね」
「僕達に出来ることは少ないかも知れないけれど」
夫は深く考える顔で言った。
「けれど施設の人にも話した」
「ええ、出来ることをね」
「何でもしていこう」
「考えていって」
「何もしないよりは」
それよりもというのだ。
「まずはだよ」
「ええ、何が出来るか何をしたらいいか考え
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