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救急車の中でも
第一章

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                救急車の中でも
 救急車に乗っている面々は難しい顔で現場に向かっていた。そうしつつ車窓から周りを見回していた。
「今日は車とか自転車少なくていいな」
「そうだよな」
「本当にこの辺りごちゃごちゃしてるからな」
「リマの中でもな」
 ペルーの首都であるこの街でというのだ。
「ここ来る時いつも混んでいて」
「それで来るのにも困るけれどな」
「今は車も自転車も少なくて」
「人も少なくてな」
「これはすぐに現場に進めるな」
「それは何よりだよ」
 こうした話をしながらだった、現場に向かっていた。そして。
 現場に着くと事故に遭って倒れている中年男性背は一七〇程で均整の取れたスタイルで薄褐色の肌にラテン系の顔と黒髪の彼を見た。
 彼にだ、救急車のスタッフ達は尋ねた。
「ホセ=アルパセテさんですね」
「間違いないですか?」
「意識はありますか?」
「はい、この通りですが」
 怪我はかなりのものだ、左足が完全に折れている。その為動けないことも明らかだった。
「意識はあります、ただ動けないので」
「それで、です」
「我々が呼ばれたのです」
「すぐに病院に運びますので」
「はい、お願いします」
 アルパセテはスタッフ達に応えた、そしてだった。
 すぐに担架の上に置かれて運ばれた、だがここで。
「ワン」
「ワンワン」
 それまでアルパセテの傍にいた二匹の犬、共に大型で垂れ耳であり優しい目をした彼等が彼のところに来てだった。
 寄り添ってきた、救急車のスタッフ達はその犬達を見て怪訝な顔になった。
「?この犬達は」
「一体何だ?」
「そういえばさっきからいたけれど」
「何なんだ?」
「この子達は僕の家族でして」
 それでとだ、アルパセテが彼等に答えた。
「いつも一緒にいるんです、両方共雄で白い子がマリオ茶色の子がルイジです」
「そうですか、貴方の家族ですか」
「そうだったんですね」
「はい、実は近くで弟と一緒に屋台で肉を焼いていて」
 そしてというのだ。
「それが仕事だったんですが休憩中に余所見運転のバイクにはねられて」
「それで、ですね」
「怪我をされたんですね」
「弟が救急車を呼んでくれてこの子達が来てくれました」
 そうだったというのだ。
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