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とある3年4組の卑怯者
6 貝殻(たからもの)
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 リリィは昼休みはクラスメイトの女子達と一緒に遊んでいた。藤木は昨日の時のように寂しく思う事はなかった。何しろこの日は放課後リリィの家に招待されたのだから、自分とリリィの二人だけの時間が楽しめると思うと嬉しく思うのだった。
「藤木君」
 永沢が不意に呼んだ。
「な、何だい、永沢君!?」
「君、今日は何か良い事でもあったのかい?」
「い、いや、そんな事ないさ!!」
 藤木はまた誤魔化した。

 藤木は放課後、自分が掃除当番だった事を思い出した。
「あ、リリィ、今日、僕掃除当番だったんだ?」
「ソージトーバン?何それ?」
「教室の掃除をするんだよ。順番でだれが掃除するか決まってるんだ」
「そうなの?日本じゃ自分達で掃除するのね」
「そうなのかい?」
「ええ、イギリスの学校では掃除してくれる業者さんがやってくれるのよ」
「いいなあ、イギリスは・・・」
「でも、自分達で掃除するのはいい心掛けだってママが言ってたわ」
「そうなんだ。終わるまで待っててくれるかい?」
「ううん、折角だから手伝うわよ」
「いいのかい?ありがとう」
「私も一緒にやれば早く終わるでしょ?」
「う、うん、そうだね!」
 藤木は掃除当番になるとはツイていないと思っていたが、リリィも共にする事になり、少し嬉しくなった。リリィは掃除係の前田ひろみから雑巾を借りて窓拭き,床の雑巾がけなどをやっていた。掃除をしながらリリィはある事を思う。
(もし『あれ』を見せたら藤木君はどう思うかしら?)
 その一方、藤木はリリィと掃除ができる事に喜びを感じ続けていた。
(リリィと一緒に掃除できるなんて・・・。こんな良い事あるのかな?)
「藤木君」
「な、永沢君!?」
 永沢が不意に呼び掛けてきた。
「君、何ニヤニヤしているんだい?」
「あ、いや、何でもないさ!」
「兎に角、ボーっとしないでくれよ」
 藤木はリリィの事ばかり考えていた為に箒で掃いている自分の手が止まってしまっていた。
「う、うん!」
 藤木は我に返り、掃除を再開した。

 掃除は終わった。リリィが手伝った頃で掃除係はいつもより掃除が(はかど)ったとかなり上機嫌だったそうだ。
「藤木君、お疲れ様」
 藤木は赤面しながら答える。
「あ、ありがとう・・・。それじゃあ、一緒に行こうか」
「でも藤木君、そのまま家に帰らずに直行して大丈夫なの?」
「うん、両親は共働きで夜遅くまで帰ってこないからね」
「そうなんだ・・・。お父さんもお母さんも大変ね」
「う、うん・・・」
 2人はリリィの家に到着した。
「ただいま〜」
「お邪魔します」
「お帰り、あら、あなたは確か藤木君ね」
 リリィの母親が出迎えた。
「はい、こんにちは」
「まあ、いらっしゃい。よく来てくれたわね」

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