暁 〜小説投稿サイト〜
ユア・ブラッド・マイン―鬼と煉獄のカタストロフ―
episode12『銀色の鬼』
[1/8]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 思い出したくもない記憶だ。

 ヒナミがまだ何も知らない無知な子供だった頃、他人(ひと)よりも少し頭のいいだけの、世界の汚さを知りもしなかった頃の話。
 宮真という家は、別になにか特別な事情を抱えた家という訳ではなかった。由緒ある名家でもなければ、祖先に偉人を持つ訳でもない。何ら特別なことのない、ありふれた家系。
 そんな平凡な家の、特別でもない父と、特殊でもない母から、ヒナミは生まれた。

 宮真ヒナミという、至高の魔女は誕生した。

 今となってはその理由に興味はない、もしかすると先祖にこのOI体質に関する何かしらの作用を受けた者が居たのかもしれないし、別にそんなこともなく、ただただ偶然の産物としてこの体質を持って生まれたのかもしれない。

 ヒナミは、あまり家から出たことはなかった。
 幼稚園や保育園にも行ったことはない、代わりにヒナミの教育は両親や『せいれん』から来たという先生が見てくれた。その頃はよく分かってはいなかったが、大阪に校舎を構えるOI能力者育成機関、聖憐学園の講師だったのだろう。

 宮真ヒナミという少女の魔女としての適性の高さは、その外見からも容易に推測できる。一点の曇りもない白銀の髪に、同じ色の透き通った宝石のような瞳。

 ヒナミの生誕当時から、その高い魔女適性が齎す危険性に行き着いていたのは国も両親も同様だった。彼女の保護は急務とされ、聖憐学園にその任が委託されたのだ。
 だが、過度な保護は宮真ヒナミという人間の成長に悪影響を与える。精神性に問題が生じれば、将来契約の段階に入っても致命的な障害となりうると判断した聖憐学園は、健やかな成長のため彼女に友人関係の構築を推奨した。

 当時、彼女の保護に当たっていた聖憐学園講師達の子供たちを、宮真ヒナミに引き合わせたのである。

 結果として、この策は成功だったと言えるだろう。あまり仲の良くない相手、或いは親友のように仲の良かった相手、差異はあれど、健全な友人関係の構築が進んでいた。

 宮真ヒナミという少女が、あまり外界に対して興味を抱かない(たち)の子であったというのも、要因としては大きかったのかもしれない。

 彼女の成長に問題はなく、次第に精神性に落ち着きが見られるようになった。齢にしては逆に早熟とも言えたが、そこに関しては両親、講師共に問題はないという判断であった。

 問題が起きたのは、ヒナミの10歳の誕生日だった。

 宮真ヒナミという存在のことは秘匿されていた筈だった。彼女の存在とその特殊性を知るのは、ヒナミの両親と日本国のみ。

 その筈だった。

『――ハッピーバースデー、ヒナミ』

 何が起こったのか、すぐには分からなかった。
 毎年のように両親が用意してくれたというケーキを、父が冷蔵庫
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ