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ユア・ブラッド・マイン―鬼と煉獄のカタストロフ―
episode11『覚悟』
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「え、シン兄まだ帰ってきてないの?」

 暗闇に月が輝き始めた頃、きょとんとした様子でそう確認を取るマナに、ヒナミはこくりと頷きを返した。

「うん。夕方くらいに玄関で会った時に、“帰るのは夜頃になるって聞いてる”って」

「シン兄の事だし大丈夫だとは思うけど、ちょっと心配だね。年越しジャンプするまでに帰ってくるかな」

 ほとんど皆は広間のゲームで遊んでいるため、今はすっからかんの共同の寝室のベッドに座るマナは、ヒナミにとって数少ない何の遠慮もなく話せる相手だった。
 皆の家族になるとは決めた、だが決めたからと言っていきなり仲良くなれるのならば苦労はしないというものだ。流石にまだ少し遠慮してしまうのは無理もない。

 少しずつ歩み寄ればいい、とシンは言っていた。彼が言うなら、きっとそうなのだろう。

「毎年そんなことしてるの?」

「うん。皆で一緒にぴょん!って。ここで皆がやっちゃうと床が抜けるかもだから、中庭でやるの。その時間まで起きてるのなんか珍しいから、去年は皆その後すぐ寝ちゃったけどね。シン兄も、『基本毎年こんなだよ』って」

 あはは、と笑うマナに釣られて、くすくすと笑う。彼女と話す頻度も最近かなり増えてきて、もはや日課のようになりつつある。マナもそう活発な子ではないが、こうして関わっていると結構な話したがり屋だったというのも最近の発見の一つだ。単に言葉を考えるのが得意ではないらしい。

「去年はねぇ、シン兄がお菓子も作ってくれたの。美味しいんだよ、シン兄のクッキー」

「え。シン、クッキーなんて焼けるの?」

「シン兄甘いもの大好きだから、自分で作る勉強もしてたんじゃないかなぁ。よくお小遣いでアイスとかも買ってくるの。たまに分けてくれるんだ」

 そういえば、仲直りの時にもアイスを買ってきていたのを思い出した。冬場のアイスも美味しいのは分かるが、そんなに高頻度で買っているのか、と内心で軽く驚く。その内体でも壊してしまわなければいいのだが。

 枕元に転がっていた腕にすっぽりと収まるくらいのテディベアを抱え込んだマナは、「私はチーズのやつが一番好きだなぁ」と笑ってベッドから立ち上がり、出窓の小さなスペースに腰掛ける。
 時計をみれば、もう21時を回ろうとしていた。そろそろ彼が帰ってきてもおかしくはない時間だとは思うが、流石にシスターが迎えに行くのだろうし心配は要らないとは思う。

「……綺麗、その髪」

「え?」

 ぽつりとマナが呟いた言葉に不意を突かれて、ヒナミは少し裏返った声で間抜けな返答を返す。余りにも脈絡が無かったので一瞬何を言われているのか分からなかったが、続けるマナの言葉に彼女の
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