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失踪した犬
第三章

[8]前話
「獣医さんに診せてあげて下さい」
「わかりました」 
 美和は警官の言葉に頷きポチを強く抱きしめた、そうしてだった。
 ポチを獣医に診せるとだった、何日も食事も水も与えられず衰弱し切っていたがそれでもだった。命に別状はなく。
 食事と水を与えていくと健康を取り戻していった、夫はその愛犬を見つつ妻に話した。
「かなり元気になってきたな」
「ええ、けれどね」
 それでもとだ、妻は夫に話した。
「まさかね」
「動物を虐待して動画にあげるなんてな」
「そんなことする人がいるのね」
「ああ、最低の奴だな」
「本当にね」
「警察に捕まって当然だ」
 夫は怒りに満ちた声で言った。
「そんな奴は」
「本当にね」
「ああ、二度と刑務所から出るな」
「全くよ、けれどね」
 美和は夫にご飯を食べているポチを見つつ話した。
「これからはそうした人に何かされても大丈夫な様にね」
「GPSも付けたしな」
「それに首輪に住所や名前は書いてあったけれど」
「さらにだな」
「大きな迷子札も付けたから」
「いいな」
「ええ、けれど今回はね」
 美和はあらためて言った。
「ネットの冷たい言葉も嫌になったけれど」
「どうしてもあるな」
「それにそんなね」
「自分の為に動物を虐待する奴がいるなんてな」
「そんなとんでもない人がいることもね」
「覚えておかないとな」
「本当にそうよね」
「ああ、二度とポチにこんなことがないようにな」
「していきましょう、じゃあポチお散歩に行こうね」
「ワンッ」
 ポチは美和の言葉にご飯を食べるのを中断して明るい鳴き声で応えた、もうすっかり元気になった彼は美和それに納との散歩も楽しんだ。既に彼の首輪には札がありGPSも付けられていた。もう二度とそんなことがない様に。


失踪した犬   完


                    2021・1・17
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