暁 〜小説投稿サイト〜
至誠一貫
第二部
第二章 〜対連合軍〜
百一 〜運命の使者〜
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「歳三様、ご無事で何よりです」
「うむ。予定が早まったが、致し方あるまい」

 虎牢関では、禀らの出迎えを受けた。
 疲労を隠せぬ朱里らは休ませる事とする。
 当人らは平気だと言い張っていたが、無理をしても始まらぬ。

「星。疾風(徐晃)の代わりを頼むぞ」
「御意。お任せ下され」
「歳三殿。私ならば平気です」
「ならぬ。これは命令だ、休むのだ」
「……し、しかし……」
「良いな?」
「……は」
「霞もだ。……酒など、呑まぬようにな」
「ええっ? そら殺生やで、歳っち〜」
「お前は、私の麾下ではない故命令は出来ぬ。だが、休める時にはそれに専念せよ」
「……しゃーないな。歳っちにそない言われて、嫌やとは言えへんし」
「そういう事だ。霞、行くぞ」
「ああ。ほな、少し眠らせて貰うで」

 疾風と霞は、連れ立って出て行った。

「殿も、少しお休みになっては?」
「私は良い。何もしておらぬのだ、疲れたなどとは言っておられぬ」
「そうは参りませぬ。あの二人や朱里らもそうですが、殿もご無理は禁物ですぞ」

 怒ったように、彩(張コウ)が言った。

「私も賛成です。この場は、私達にお任せ下さい」
「ですな。主もお休み下され」

 禀だけでなく、星までも大きく頷いた。
 むう、この程度で休んでいてはいかぬと思うが……だが、あまり我を張るのもどうか。
 何事も私一人で考えて決めねばならなかった新撰組とは訳が違うのだ。
 ……ならば、皆に頼ってみるのも悪くなかろう。

「相わかった。だが、不測の事態とならばいつでも起こすように、良いな?」
「御意」

 私は腰を上げると、それまで黙っていた恋が近寄ってきた。

「……兄ぃ、寝るの?」
「うむ」
「……じゃあ、恋も一緒に寝る」
「……は?」
「……え?」
「……恋。今何と申した?」

 禀と彩が固まり、星が押し殺した声で言う。

「……? 恋、兄ぃと一緒に寝る」

 首を傾げる恋。

「な、何を戯けた事を!」
「それは許さん! 殿!」
「……星、彩。何を息巻いておるのだ」
「何を、ではありませぬ! 恋の言葉、聞き捨てなりませぬ!」
「お前達、何か勘違いしておるのではないか? 恋が申した事、それ以上でもそれ以下でもない」
「し、しかし!」
「……恋は、女として申し分のない身体つきです。例えそのつもりがなくとも、共に床に入るなど認められませぬ!」

 なるほど、道理で二人が収まらぬ訳だ。
 恋とて女子(おなご)、いずれは誰かに抱かれるやも知れぬ。
 だが、私にはそのつもりはない。
 その対象として、恋を見られる筈もない。
 ましてや、当人からそう迫られる可能性も皆無であろう。
 さて、何と言って聞かせるか
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