第三章
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「こっそり路地裏にでも連れ込んでな、お前等は覆面と手袋で素性隠せ」
「そしてですね」
「あいつを捕まえて」
「そうしてですね」
「徹底的にやってやれ、生きもの粗末にする奴に容赦するな」
懲戒免職が決まった鳩山にそうする様に言った、そして。
懲戒免職を受けて家に帰る鳩山は拉致された、その後。
鳩山のところを訪れた山村は彼に冷たく言った。
「誰かに襲われて真夜中の路地裏でボコられたそうだな」
「・・・・・・・・・」
鳩山は喋られなかった、見れば満身創痍で病院のベッドに横たわっている。山村はその彼を冷たい目で見下ろしている。
「歯は全部折られて顎は粉々で両肩砕かれて手首と膝も割られて踵切られて睾丸両方潰されたんだな」
「・・・・・・・・・」
鳩山は何も言わない、山村だけが言う。
「全快は無理、これから一生流動食で手足もまともに動かなくて障害者だそうだな。子供も出来ない」
「・・・・・・・・・」
「お前は一生誰かの世話になって生きる、けれどその誰かがお前の過去のことを知って見捨てたらお前は終わりだ」
それで死ぬしかなくなるというのだ。
「その恐怖に怯えながら生きていく、しかしな」
「・・・・・・・・・」
「コロはそんな目に遭ったんだ、信じていて愛していたお前に裏切られて捨てられてあと少しで殺処分だった」
「・・・・・・・・・」
「近所の人に聞いた、最初は宝と言っていて大事にしていたのをやがて無視する様になって散歩にも連れて行かなくなったんだな」
「・・・・・・・・・」
「そして捨てた」
そうしたことを言うのだった。
「そうしたらお前はこうなった、言っておくがお前を襲わせた奴はわかっていないし調べるつもりもない、お前の両親もお前のやったことを俺が話したら自業自得だからと捜査をお願いしなかった、誰もな」
「・・・・・・・・・」
「お前を襲われたのは俺じゃないがな、それも言っておく。全部お前が蒔いた種だ」
それが実ったというのだ。
「それでこうなった、お前は宝を捨てて今のお前を手に入れたんだ」
「・・・・・・・・・」
「仕事も人望もない、身体も満足に動けないお前をな。そして誰もお前を知ればお前に同情しない忌み嫌うだけだ」
「・・・・・・・・・」
「精々そのことを思いながら生きていけ、じゃあな」
ここまで言ってだった。
山村は鳩山に背を向けて彼の前を去った、そして。
コロの新しい飼い主のところに笑顔で行った、するとコロは。
「ワンワンッ」
「元気だな、今日も」
山村がこう言う程だった、彼は明るく尻尾を振って山村を迎えてくれた。
宝を捨てた男が得たもの 完
2020・12・28
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