暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/WizarDragonknight
千翼
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
の見えない友奈は、「えへへ……」と頭を掻く。

「でも、これで逃げられたよね? よかった……」

 友奈が大きく息を吐いた。

「大丈夫? ケガとか、してない?」
「し、してない……っ!?」

 千翼は思わず、頭に乗せられた友奈の手を振り払う。

「な、なに!?」
「ごめんね。倒れそうだったからつい……君、名前は?」
「……千翼(ちひろ)……」
「千翼君? ……うん、可愛い名前だね!」
「や、止めてよ!」

 千翼は拒絶する。ラビットハウスの連中といい、この名前にはいいことがない。

「なんで俺の親はこんな名前……」
「ええ? 可愛いじゃん!」
「だから!」

 千翼は地団駄を踏む。そのまま、友奈へ礼も言わずに歩き去ろうとしたが。

「……お腹……空いた……」

 自然の摂理の音が、内部より響き、道路に力なく倒れた。



「……何だよこれ」

 鼻を充満する添加物の臭いに、千翼は顔をしかめた。だが、友奈はにっこりとその食べ物を押し出してきた。
 白い麦類と、茶色の液体。それを蓋する、茶色の四角形。
 警戒を強める千翼とは裏腹に、友奈は割りばしを割った。

「うどんだよ!」
「うどん……?」
「そう! ほら、食べて食べて! 私の驕り!」
「……」

 怪訝な表情の千翼に構わず、友奈はうどんを啜り始めた。

「うん! おいしい! ほら、千翼君も食べて?」
「……なんで……」
「あれ? もしかして、うどん嫌いだった?」
「……食べることが……あんまり好きじゃない」


 なんか、汚く見えるから。そういう思いを言葉にはしなかった。

「そうなんだ。でも、お腹空いたんでしょ?」
「いつも病院で……」
「困ったときはうどん! 健康にもいいんだから、きっと千翼君も気に入るって!」

 ささ、と友奈は千翼に促した。千翼の鼻腔をうどんの臭いがくすぐる。だが、千翼の食欲をそそることは全くなかった。

「……」

 むしろ千翼の視線は、盆を持つ彼女の手に当てられていた。そして、思わずゴクリと生唾を飲む。

「ほら。美味しそうでしょ?」

 友奈は何も気づいていないようだった。千翼は渋々、箸を裂く。パキッという音を耳にし、千翼はぬるりとした物体を挟み込む。

「……」
「ほらほら。こんな風に」

 友奈がうどんを食べている。それをマネするように、千翼もうどんを食し始めた。
 口の中の固形物に対し、味がほとんどなかった。

「ごちそうさま!」

 うどん汁もほとんど飲み切った友奈に対し、千翼は汁に全く手を付けていなかった。

「どうだった? 千翼君?」
「……別に……」
「別に?」

 こちらを覗き込む友奈。外見年齢年上の
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ