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夢幻水滸伝
第百八十話 プールサイドの対面その十五
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「裁決をする担当の入牢数年位にしていました」
「罪を一ランクか二ランク軽くしてたな」
「はい、ですから橋本左内もです」
 その彼もだったのだ、本来は。
「死罪どころかです」
「島流しにもならんかったな」
「そうでした」
 この刑罰を軽くするシステムは幕府の寛大さと仁愛を示すシステムだったと言われている、そして多くの者が死罪を多く出すことを好まなかったからとも考えられる。
「最悪現状維持でしたから」
「遠島やったな」
「あの人の場合は」
「けど井伊はそこを拡大解釈してな」
「重くしてです」
「死罪にしたな」
「そんなことしましたから」
 尾崎は中里に忌々し気に述べた。
「ああなるのも当然です」
「首取られたのもな」
「雪の上を引き摺られたそうですけど」
 討ち取られた首をそうされたのだ。
「それもです」
「悲しんだり残念に思うことはないか」
「むしろもっと酷い目に遭うべきでした」 
 尾崎はこうまで言った。
「あんな奴は」
「自分ほんま井伊が嫌いやな」
「橋本左内さんのことがあるので」
「やっぱりそれか」
「大嫌いです」
「そやねんな」
「はい、幕末で一番」
 中里に強い声で言った。
「嫌いです」
「凶悪犯には刑罰は重くですが」
 太宰も言ってきた。
「あの様な無闇に死罪や重罰を出すことはです」
「あかんな」
「凶悪犯は死罪を多くすべきですが」
「それでも安政の大獄みたいなことはやな」
「してはいけません、というかテロでもしないと」
「政府に何か言ってもやな」
「いいのです」
 構わないというのだ。
「それで」
「そういうことやな」
「はい、井伊は幕府を守ろうと必死でしたが」
「最悪のことをしてやな」
「かえって幕府の寿命を縮めました」
 その酷刑の濫発で天下の幕府への信頼をなくしてというのだ。
「そうしましたので」
「あかんかったんやな」
「私はあの人は反面教師の一人と考えています」
「あっちの世界でやな」
「左様です」
「自分はこれから僕等の内政全般の総責任者やしな」
 中里は強い声で述べた。
「治安、教育、インフラ、財政、経済、そういったことのな」
「そのことを受け持たせて頂くので」
 それでというのだ。
「あの人はです」
「反面教師としてやな」
「あちらの世界で頑張っていきます」
「そういうことやな」
「ええ考えや、それとな」
 芥川はここでエカチェリーナ達を見て話した。
「ちょっと話したことがあるがええか」
「何でしょうか」
「あの世界のことでやけどな、ええか」
「はい、お話出来ることなら」
 エカチェリーナも頷いた、そうして話は新たなものに移った。


第百八十話   完


            
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