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べとべとさんがいたので
第三章

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「だからよ」
「それでか」
「そう言うのね」
「そうよ、しかしね」
 娘はここで悲しそうな顔になってこんなことも言った。
「ここも寂れたわね」
「ああ、商店街はな」
「もう完全にね」
「私が学生の頃からだったけれど」
「そうだったな、あの頃にはな」
「商店街の方もね」
「昔は色々はお店があったのよね」
 娘は両親に問うた。
「本当に」
「シャッターだった店が全部開いていてな」
「大勢の人が行き来していたのよ」
「わし等が若い頃はな」
「そうだったのよ」
「あれじゃあ妖怪が出てもね」
 娘はこうも言った。
「おかしくないわね」
「おい、それは幾ら何でもな」
「言い過ぎでしょ」
「けれどあんな風だとね」
 あまりにも寂れていてとだ、娘は言うのだった。言いつつ今自分が家族と共に暮らしている東大阪の方も心配になった。商店街の問題は日本全体のことなのだ。
 そこから色々世間話をしているとだった、不意に幸松と志奈子から見て孫にあたる幸也と美香子が家に戻ってきてこんなことを言ってきた。
「さっきお父さんと駅前行ってきたけれど」
「足音したの」
「僕達以外に誰もいないのに」
「どうしてかね」
「誰もいないのにか」
 祖父は孫達の話を聞いてこう言った。
「それってな」
「今さっきお話したね」
 祖母も言ってきた。
「妖怪?」
「それか?確か漫画であったな」
 祖父は自分が読んできたそれから言った。
「誰もいないのに足音だけが聞こえるとかな」
「あったのね」
「あれだよ、あのゲゲゲの」
「ああ、あの漫画ね」
「お前も知ってるだろ」
「何度もアニメになってるしね」
「べとべとさん?」
 娘が言ってきた。
「ゲゲゲのっていうと」
「ああ、お前が子供の頃もやってたな」
「あのアニメ何度もやってるから」
「この前もやってたし」
 それでとだ、娘は両親に話した。
「子供達のお付き合いで観てたわ」
「だから知ってるか」
「私達よりも」
「それでしょ、というか本当に妖怪いるじゃない」 
 娘は自分の話の通りだとも言った。
「あまりにも寂れていて」
「駅前なのにか」
「それでもなの」
「駅前でもあそこまで寂れていたら」
 見事なまでのシャッター街になっていればというのだ。
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