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星河の覇皇
第七十六部第一章 動きはじめる両軍その十

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「幾ら戦死したら天国に行けてもな」
「軍曹も結婚されてお子さんもまだ」
「小さいからな、せめて娘のな」
 その子供のことも話すのだった。
「結婚式を見るまではな」
「その時まではですか」
「死ねないからな」
「だからですね」
「この戦争が終わって統一されてな」
 この戦争でも生き残ることは言うまでもない。
「そして平和になればな」
「軍曹としても有り難いですね」
「ああ、己の技量を磨いて上級軍曹になって」
 そのうえでというのだ。
「娘の結婚式を見る」
「それが軍曹の望みですか」
「そうさ、だからな」
「早く平和になって欲しい」
「本当にな」
「コーヒーとお菓子持って来ました」
 ここでハーディンの声がしてきた。
「是非お召し上がり下さい」
「おお、来たか」
「悪いな」
 二人でハーディンに顔を向けて言った、そのうえでそれぞれのコーヒーを受け取る。そうしてお菓子もだった。
 受け取る、そのうえでアブクールはコーヒーやお菓子を持って来たハーディンに尋ねた。
「御前下士官補兵士だったな」
「はい、そうです」
「大体三年で伍長になるよな」
「遅くて六年とかですけれどね」
 こう返したハーディンだった、自分の席に座って自分の紅茶も飲んでいる。
「そうです」
「そうだよな、それでもまず確実に下士官になれるな」
「そうはなってますね」
「そうだな、それだけでも大きいな」
 こうハーディンに言うのだった。
「一般と比べたらな」
「軍曹は一般で」
「ああ、伍長には敵艦撃沈してなったさ」 
 そのことによってというのだ。
「それでな」
「じゃあ若し敵艦撃沈出来なかったら」
「下士官になったこともな」
 伍長にだ。
「それからまた一隻な」
「軍曹が撃った魚雷が敵艦を沈めて」
「三十で軍曹になったけれどな」 
 それでもというのだ。
「若し沈めてなかったらな」
「軍曹にもですか」
「なってなかったな」
 三十でというのだ。
「知ってるだろ、一般から下士官になるのはな」
「中々でしたよね」
「これが辛いんだよ」
 狭き門だというのだ、一般から入って下士官になることは。下士官になれば職業軍人扱いだがそうなるのが難しいのだ。
「中々な」
「言われている通りですね」
「そうだよ、そう思うと補兵士はな」
「恵まれてますか」
「ああ、その恵まれてること活かせよ」
「それで、ですか」
「ちゃんと昇進しろよ」
 下士官にというのだ。
「いいな」
「武勲を挙げてですね」
「そして真面目に働いてな」
 やはりサハラではこちらは二番目だった。
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