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MOONDREAMER:第二章〜
第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第71話 境界の大妖怪
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にはしないだろう。
 そして、勇美は困惑する思考をどうにか落ち着けさせて言った。
「はい、そこまで熱中してみる訳では有りませんが、嗜む程度には」
 勇美は正直に答えていた。何故なら先程から変わった空気の性質上、紫がふざけてそのような質問をしたとは思えなかったからである。
「正直で宜しいわね♪」
 そう紫は半分茶化す、半分褒めるかのように勇美のその態度を評価したのだ。それは紫自身が勇美の事をどう思っているかという現れなのかも知れない。
 そして、紫は質問を続ける。ここからが本題だと言わんばかりに、彼女の視線は真剣なものとなっていた。
「それでは質問を続けますわね。勇美さん、あなたはヒーローには何が必要だと思いますか?」
「……」
 勇美はそれを聞いて考え込んでしまった。漸く質問の内容が真剣染みてきたと思いながら。
 この質問には真面目に答えなければいけないだろう。ふざけて答えたからといって紫に何かされるという事はないだろうけど、彼女の信頼を損ねる事には繋がるだろうから。
 そして、勇美は考えを巡らせていった。
 まずは力だろうか。勇美がかつて一番望んだものだ。そして今、依姫から神降ろしの力を借りる形でとはいえ、彼女は念願の力を行使する事が出来るようになったのだ。
 続いて、優しさ等の人格だろう。いくら力があっても、悪しき考えを持って人々を苦しめるようでは悪役そのものだからだ。
 だが、勇美はそこまで考えて首を横に振るのだった。もっと、ヒーローには必要不可欠なものがあるからだ。
 そう思いながら、勇美は答えを言うべく口を開くのだった。
「……それは、怪人や怪獣といった『悪役』ですね」
 それが勇美の答えであった。今までヒーローものの作品を見てきた上で導き出された事柄である。
 強くて優しい、それだけではヒーローにはなり得ないのだ。それは、群れの一員がリーダーと認められるには群れにきっちりとした『利益』をもたらさなければいけないのであり、人格や個人的な強さなどは求められていないのである。
 それはヒーローにも当てはまる事である。物語のヒーローがヒーローとして認められるには、人々に害を為す存在を打ち倒して利益を分かりやすく提供しなければいけないのだ。
 そう、その為に怪人、怪獣のような『悪役』はヒーロー作品になくてはならない存在、そういう事である。
 そこまで考えて、勇美ははっとなった。紫の言わんとしている事が少しずつ理解出来はじめたのだ。
「……それで第二次月面戦争ですか……?」
「意外に察しが早くていいわね」
 紫は意外に切れのいい勇美に対して賞賛の言葉を掛けた。
 そして、何故第二次月面戦争にヒーローの話が持ち込まれたか、紫は淡々と語り始める。
「勇美さん、あなたもそこの月の姫君達と関わる事で月人達の思想につ
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