暁 〜小説投稿サイト〜
MOONDREAMER:第二章〜
第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第70話 訪れる邂逅:後編
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 とうとう八雲紫の境界の中へ入り込んだ勇美。そこは、不思議という言葉でしか説明出来ない場所であった。
 外から見えた裂け目の通り、辺り一面赤と紫の斑のような空間が広がっているのである。
 この場所では昼や夜、縦や横とは一体何かという質問すら意味を持たないと思われる程だ。
 そして、その斑の空間を彩るかのように眼球のようなものが辺りに散りばめられているのだ。それはもう『禍々しい』という言葉では説明しきれない程の産物であった。
 だが、勇美はその恐怖に飲み込まれずに済むのだった。何故なら。
「依姫さん!」
 そう、この場所には勇美の一番大切な人が確かにいたからであった。
「勇美、よく来たわね」
 そう落ち着き払いながらも依姫も、勇美が無事に来た事で安堵の様子を見せる。
 互いに見知った者同士を認識し合い、二人は一先ず一息つくのであった。
「依姫さん、ここが境界の中なのですね」
「ええ、間違いなさそうね。この場所から『彼女』の妖力を感じるから」
 そう言い合って二人は今まさに八雲紫の領域へ足を踏み入れた事を再認識した。
 そこへ、依姫は言葉を付け足す。
「そして、彼女は私達を歓迎するようね」
「えっ?」
 そのような予想をしていなかった事を依姫に言われて、勇美は困惑してしまった。そして堪らずにその理由を勇美は聞く。
「どうしてそのような事が分かるのですか?」
「分からない?」
 依姫はそう言いながら、然り気無く自分の足元に目配せをしたのだった。
「!」
 それにより勇美は『気付いた』ようであった。
 今いるこの場所は上下といった概念すらも存在するのか怪しい空間なのだ。そんな所にいながら勇美達は今までちゃんと『足を付けて』いたのだ。
 その矛盾するような現状を説明するものが、依姫の視線の先にはあったのである。
「……足場がありますね」
 勇美のその言葉が答えなのであった。今彼女達がいる足元には薄いガラスのような、光を固形にして敷き詰めたような白い半透明のものが存在するのだった。
 そして、それは一直線に先の先まで伸びているのだ。そう、別れ道の類いはなく見事な一本道なのである。
 それが意味する所は……?
「紫さんが私達を招き入れる為に創ったという事でしょうか?」
「それは私にも分からないわ」
 いくら実力では自分の方が上回っているとしても、依姫でも分からない事はあるのだった。それを彼女は素直に口にしたのだった。
 その依姫の正直な振る舞いが勇美には嬉しいのだ。自分を偽らない依姫だから、今まで勇美は彼女の下で奮闘しようと思えてきたのだから。
 だから、勇美にとって綿月依姫という存在は心強いのだ。故に今回の未知の領域への挑戦も、彼女と一緒なら切り抜けられるというものなのだった。
 そんな依姫と一緒なら、こ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ