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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
疾走編
第三十三話 帰途
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ではない。誠実だがその能力と声望の高さ故に、対抗閥から野心家とみられているだけだ。実際、同盟軍の権力中枢に位置し、その組織の最高位が手に届く所にあるのなら、そこを目指すのは自然な流れだろう。自ら喧伝する事はないが、彼にはその能力も意思もあるのだ。『能力と野心の調和のとれた誠実な軍人』とでも評すべきなのだろうか。
「どうかしたかね?」
「いえ、何でもありません」
「顔に書いてある。言ってみたまえ」
「では…このまま行けば、閣下から代理の二文字が取れるのはそう遠くない先の事というのは理解出来ます」
「それで」
「フェザーンから彼らが戻れば、色々な事が分かるでしょう。ですが見当違いだった、という事もあります。我々が危惧したような情報漏洩やスパイなどは存在せず、同盟と帝国にまたがる麻薬犯罪を暴き、その蔓延を防いだ。それだけかもしれません。確かにそれだけでもかなりの功績です。ですが軍組織がその犯罪に利用されていた以上、ただの自浄を目的とした行為でしかありません。悪い言い方になりますが、当たり前の事を当たり前にやっただけ、という事になります。今回はその当たり前を行うのに色々と問題がありはしましたが」
「確かにそうだな」
「下手をすると自作自演、と言われかねません」
「誰にだね?」
「それを私の口から申し訳あげるのは憚られます」
「そうだな、私が宇宙艦隊司令長官の座に座るのを決して快く思わぬ者もいるだろう。では有無を言わせない為には何が必要だと思うかね?」
「目に見える功績です。軍だけではなく、同盟市民からも見える功績が必要です」
「だろうな」
そう言うとシトレ大将はバインダーに挟んだペーパーを机の引き出しから取り出して、私の卓上に置いた。
「素案だ。目を通してみてくれないか。見せるのは君が初めてだ」
「…!これは」
表題には『案:イゼルローン攻略作戦概要』と記してあった。


5月28日17:30 フェザーン星系 フェザーン近傍 フェザーン商船「マレキフィウム」
ヤマト・ウィンチェスター

 軍艦と違って食事を摂る時間は特に決められていない。乗組員はそうはいかないが、客は俺達しかいない上にこの船は旅客船ではなく小さい貨客船だから、皆が一斉に食堂にも入れる訳でもないし、自分の部屋で食べたって構わないのだ。でも習慣とは恐ろしいもので、食堂に行ったらローゼンリッターの皆が揃って夕食を食べていた。
「満席だな」
「ああ」
「よう二人とも。もう空くから待っていてくれ」
シェーンコップが悪いな、と手で示しながら、ワインを紙コップに注ぎ出した。席を空けるのは部下で、自分は席を立つ気はないらしい。
「配食時間がが決まっている訳じゃないんですから、皆で一斉に食べなくても」
「この時間には腹が空くようになっている。軍隊の悪しき慣習だ
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