暁 〜小説投稿サイト〜
黄泉ブックタワー
第二章 旅は魔本とともに
第6話 頑張ることで、少しでも喜んでもらえるなら
[1/3]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 現実逃避のための旅は、順調に始まった。

 特急列車を使って二時間半。無事に終点に到着すると、アカリはミナトとともに駅の外に出た。
 ここから先は車での移動だ。

 東京に比べるとさすがに空気が違う。
 少し涼しいし、おいしい。

「どうだアカリ? 少しは懐かしいと思うのか?」

 そう言って伸びをしているミナトの左手には、魔本のほかに、市販のガイドブックが握られている。
 普通の人間であればずっと持っているのはつらいはずなのだが、まるで重力を無視するかのように軽々と握り込んでいた。
 なお、魔本はまた出し直してきたようで、表紙は焦げ茶色をしている。

「うーん。懐かしいような、そうでもないような、記憶がないような」
「そうか。前に来たのがまだ小さいころなら、忘れてても仕方ないよな。通り過ぎただけの町ならなおさらだ」

 昔に祖父と一緒に来たときと、おそらく同じルートで来ているはずだった。
 しかし、東京に比べてかなり高さ控えめなこの街並みを見ても、アカリは特に何かを感じることはなかった。

「じゃあ行こうぜ。レンタカー屋はこっちだ」

 いつのまにかレンタカー屋の場所を把握していたミナトが、指でその方向を示した。
 羽をしまっていることもあり、白い犬歯を少しだけ目立たせて笑っているその姿は、よく日焼けしたサーファーという感じだ。

「それとも、空飛んでくか? 俺につかまってもらえれば――」
「却下!」
「へーい」

 特急列車の席では窓際を譲られていた。
 さらに、頼んでもいないのになぜかガイドブックをいくつも持ってきており、窓から見える景色の説明までしてくれていた。

 そして今。
 彼は、肩にアカリのバッグ、背中に自身のリュックと、二人分の荷物をしょっている。アカリは手ぶらだ。

 今回の旅についてきてもらったのは、単に一人だと行きづらいという理由だった。
 空気のような感じでよかったのだが、彼はまるで付き人のように機能している。
 相変わらず魔本をめくりながら説教めいたことを言ってくることを除けば、今のところは完璧な同伴者だ。

 ――ずいぶんと親切な悪魔さんだこと。

 そう思いながら、アカリも彼に続いてレンタカー屋へと歩いた。



 車を走らせること一時間強。
 この地方では一番の観光名所である鍾乳洞、天岩洞の大きな看板が見えた。
 そしてさらに進むと、「洞入口」と矢印付きで書かれている小さな看板も見えた。
 だが、そこはいったん素通りし、車のまま坂道を登り続ける。

 この坂道の途中にはキャンプ場があり、さらにそのまま登ると、車のまま山頂近くまで行くことができる。そこには高原を見渡せる展望台が設置されていることになっていた。
 先にそちらに
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ