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黄泉ブックタワー
第一章 それは秋葉原にそびえ立つ魔本の塔
第3話 なんで、いないんだ?
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になるんだよ」
「ふーん」

 はい読みますと契約して願いを叶えてもらって、そのあと約束を破って本を読まなかったらどうするのだろう。
 アカリはそう思ったが、読んでほしい≠セから、あくまでもお願いベースということなのかもしれないと考え、もっと気になったことを聞いた。

「さっき契約の対価について、『普通は魂を抜く』って言ってたけど、強制的に人間の魂を抜いて魔本にする場合だと、必ず製本は成功するんだ?」
「お前頭いいな。そのとおりだぞ。契約で魂を強制的に抜けば、本が大嫌いな人間でも、百パーセント魔本になる」

「それって苦しませずに魂を抜けるんでしょ? 別に抜いてくれてもいいけど」
「だからそういうこと言うなって」
「変な悪魔さんね」
「変で悪かったな。もうこれだけ話したんだから、契約しないとかだめだぞ。無理やりでもいいから、なんかお願いしろ」

 ふたたび考え込んだが、やはり「悪魔に頼むならこれだ」という願いは出てこない。

 うーん……。
 あ。
 アカリは、一つひらめいた。

「じゃあ。ちょうどいいの思い付いたから、それで」
「お。やっと決まったか。なんだ?」
「うん。一泊二日で旅行にでも行こうかなって。で、あんた、ついてきてくれる? ついてくるだけで、何もしなくていいから」

 青年が「ん?」と首をひねる。

「それだと悪魔の魔術と関係ないだろ。別に俺に頼まなくてもよくないか? 一緒についていくだけなら、人間に……友達に頼めばいいんじゃないか?」

 その疑問に、アカリは自身でも不思議なほど、さらっと答えた。

「友達、いないんだよね」
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