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幻の月は空に輝く
衝撃
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の声が聞こえて、私は無言になる所か口をぽかんと開けたまま間抜け面を天華に披露しつつ、ギギギと不自然な音をたてながら天華の方を向いた。
 ちょっと確認したい事が出来ちゃったかなぁ。
 未来の日本の割りに、やけに古風な単語が飛び交ってたような気もしたんだけど、きっと私が死んでる間に色々とあったと思ってたんだよね。寝物語を聞いているみたいだったから尚更深く考えなかったというかね。
 でも大丈夫。
 まだ胎児。
 修正ならば幾らでもオッケーなはず!
 なので天華に質問を投げかければ、ちょこんと首を傾げられた。雰囲気でそのぐらいの仕草の事はわかるのですよ。

《ここは火の国の木の葉隠れ里だ。ランは、忍を知らぬのか?》

 不思議そうに。本当に不思議そうに聞かれたんだけどね。
 まだ胎児だからね。生まれてないからね。見た事ないんだよーって言えば、天華はやっぱり不思議そうだったけど、とりあえず納得してくれたみたい。
 気持ちはわからなくもないんだけどね。これだけ喋る胎児はいないだろうし。

《……我は、長い事宵闇族の内に宿っているが、ランのような意志のある胎児には初めて出逢った。故に、知っているかと思っていたのだが》

 うん。他の胎児に会った事はないけど、私みたいな胎児はいないと思うよ。
 天華の言葉に返答しながら、私の頭の中では色々なものが総動員されての緊急会議中だったりもする。
 火の国って言ったよね。
 木の葉隠れ里って言ったよね。
 忍っていったよねー。


 ………………………。


 たっぷりと。本当にたっぷりと沈黙をかました後、私は意識的に天華を抱きしめた。

「(天華。私はね、こことは別の世界で死んで、ここに生まれてきたんだよ。何故か意識はあるし記憶は失われてないけど……ここの常識は知らないの。ここではない世界から来たからね)」

 私のいた世界の、漫画の中の世界、とは言わなかった。
 だって、私はここが漫画の中とは思えないもの。現実に皆が生きて、日々の暮らしを営んでいる。

《ふむ。宵闇族は特殊故、そういう事もあろう。それに…だからこそ…》

「(天華…?)」

 珍しく歯切れの悪い天華。 
 さっきから宵闇族って言葉も気になるんだけど、なんとなく雰囲気的にまだ聞かなくていいかなー。と思わなくもない。
 だから、今は聞かないでおく。

 だってさ。
 既に、私という存在がイレギュラーでしょ?
 本来なら在り得ないと思うし。
 私がこの世界で、通りすがりAという存在ではないだろうと思える証は、天華の存在かもしれない。
 クシナさんがいてこれから出産なら、天華は九尾じゃない。でも、天華は狐だ。意志をもった、人の身体に宿る不思議な存在。それと同時に私の大切な弟。


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