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MOONDREAMER:第二章〜
第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第58話 秘策:後編
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だった。
「ところで跳流とやら」
 そんな華やかな雰囲気で話す二人の間に依姫が入り込む。何やら神妙な面持ちである。
「どうしたのじゃ?」
 そんな依姫に跳流はキョトンと首を傾げる。口調は年寄りめいていても、その仕草はあどけない少女そのものであった。
(可愛い……)
 なので、依姫は跳流に対してそんな事を思ってしまったのだった。
 だが、今はそのような場合ではないと心機一転して話を続ける。
「跳流、貴方は得体の知れない存在に意識を乗っとられましたわよね」
「うむ、そうじゃ」
 依姫に指摘されて、跳流はそう素直に答える。隠してどうこうなる事ではないと跳流も分かっているのだった。そんな跳流に、依姫はこう続ける。
「私が神降ろしで呼び出せる『伊豆能売』には、穢れ等を祓う力があります。
 そして、その対象は毒や邪悪な念にも及ぶ事が出来ます。
 つまり、貴方を操っていた邪念も祓う事が出来るという事です。
 その為に、ここは伊豆能売と私に任せてはもらえないでしょうか?」
 つまり、依姫と伊豆能売の力があれば跳流を蝕んでいた邪悪な意識から解放させる事が出来るという事である。
 それは、跳流が一番望んでいた事であった。これで自分を苦しめていた存在から解き放たれるのだ。もう、無意識の内に人里の畑を襲う事もないだろう。
 これ以上ない提案であろう。だが、当の跳流はバツが悪そうな表情を浮かべながら言った。
「そなたの申し出は有難いのじゃが、もはやその必要はなくなったようじゃ……」
「何故です?」
 冷静さを保ちながらも訝りながら依姫は言う。
 その依姫の疑問に答える形で跳流は説明していく。
「どうやら、勇美と力を合わせてわしの体を誘爆させる等という事をした為かのう……。
 あれっきり、わしに纏わり付いていた嫌な感覚がのうなったのじゃ。
 不思議な話じゃがのう……」
 そう言って跳流は照れ臭そうにポリポリと指で掻いてみせる。
 ──何て少年誌的な展開……、依姫はそう突っ込みたくなる気持ちの一方で、それもまた常識に囚われてはいけない幻想郷らしいかと半分納得もするのだった。
「それでは、跳流は伊豆能売の処置を受けなくてもいいのですね」
「うむ、わしに二言はないぞい」
 そう言って、ニッコリと少女らしい笑みを見せる跳流であった。
 依姫にそう接した後、跳流は勇美に向き直って言った。
「おめでとうじゃ、勇美。お主の勝ちじゃ」
 そう今回の勝負の結果を評価する跳流。だが、勇美はここで首を横に降った。
「いえ、この勝負は跳流さんが体を張ってくれたからこそ決着が着いたんです。だから、私の勝ちではありません」
 勇美のその言い分をしかと受け止める跳流。しかし、今度は彼女が首を横に振る番であった。
「いや、あのような事態になったのは
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