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MOONDREAMER:第二章〜
第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第56話 秘策:前編
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だから』か……」
 その言葉を跳流達はどこか達観した様子で聞き入る。
 そして勇美は続ける。
「私が非力な人間だったからこそ、依姫さんから借りた神降ろしの力をもっともっと使いこなしたいという気持ちになっていったんです。
 私がもし妖怪だったらそうは思わなかったかも知れない、だから私は今人間でいる事が誇りなんです!」
 そう言い切った勇美の表情は晴天の如く澄みきっていたのだった。
 その言葉を跳流達は余す事なく聞いていた。今はバッタの形態をとっているからその表情を読み知る事は出来ないが、やがて一体が口を開く。
「いや、勇美殿。よく言った。そなたは立派な人間じゃな。今のそなたは実に良い面持ちをしているぞ」
「ええ、朝のトイレで綺麗なバナナが出て来た時位すっきりしています♪」
「いや、その例えはどうかの……」
 些か下品な比喩に、威風堂々とした跳流もたじろいでしまうのだった。
 しかし、下品な事はどうあれ、依姫は今の言葉を慧音に聞かせてあげようと思うのだった。
 何故なら、今の勇美のような考えを持てる者がいるからこそ、慧音は人間を愛しているのだから。
 今後慧音にとって更なる励みになるだろう。
「勇美……」
 そして、今現在勇美の言葉に感銘を受けている者がいた。
 メディスンである。今まで落ち着いた様子で勇美と跳流の戦いを見守っていた彼女であったが、先程の勇美の言葉を受けて状況が変わったのだった。
 胸から喉にかけて苦しくも心地よい締め付けの感覚、そして熱でも帯びたかのような目頭。
 正にメディスンは今、勇美に感動を覚えているのだ。──あれ程憎い人間である勇美に。
 無論メディスンにとって人間は今でも憎い。
 だが、その感情を上回る程の感銘をメディスンは今受けているのだった。
 それは勇美が成長したのと同じように、メディスン自身の成長の証でもあるのだ。
 その感情を依姫に悟られないようにメディスンは努めた。彼女は真面目な性格であるが、意外に相手を茶化すのが趣味であるのだ。その事は今までの付き合いで明白である。
 別段茶化されてどうなるという事はないが、早い話が『癪』なのだ。
 新参妖怪たるメディスンにもなけなしの自尊心というものがある。なので彼女は平静を装う事にしたのだった。
 そして、視点は勇美に戻る。
 人間である事を誇りにする生き方を彼女は選んだ。だがそれだけで今の戦況が覆る程世の中は甘くないのだ。
 そこで勇美は次の手を打つ事にした。
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