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公爵の歯
第二章
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「大韓にもだな」
「はい、あの国にもです」
「よりによって皇帝があの国の大使館に入りました」
「そのうえであの国に権益をどんどん渡しています」
「大韓帝国は最早半分露西亜の属国です」
「いえ、もうそう言っていいかも知れません」
「あの半島が露西亜の手に完全に落ちてだ」
 そしてというのだ。
「大軍を置けばどうなる」
「我が国は喉元に刃を突き付けられた」
「そうなりますね」
「そうなってはです」
「どうなるか」
「それは絶対に避けねばならない、だが」
 それでもとだ、山縣は難しい顔で話した。
「露西亜はあまりにも強い」
「あの英吉利とも正面から戦える程です」
「とかく強大です」
「その強大さを思えば」
「ことを構えることは」
「清よりさらに強い」 
 先に日本が戦ったその国よりもというのだ。
「ではだ」
「それならばですね」
「戦えないですね」
「とても」
「あの国とは」
「そうだ、あの国と戦ってもだ」
 それこそとだ、山縣はさらに言った。
「我が国は勝てない」
「とてもですね」
「清との戦の後で何だかんだで遼東を取られ」
「そこに居座られ」
「今も長城の北に居座られていますが」
「それでもですね」
「あの国と戦うことはだ」
 日本がそうすることはとだ、山縣は深刻さらに言えばこれ以上はない危機を感じてそのうえで語った。
「間違ってもだ」
「出来ませんね」
「英吉利も全面で対することは避けています」
「欧州の真ん中で覇を唱える独逸も同じです」
「あの国ですらです」
「そうだ、ああした国々が対することを避けてだ」
 そしてというのだ。
「どうして我が国が戦える」
「勝てる筈がないです」
「到底」
「どう考えても」
「そうだ、だが露西亜にこれ以上好きにさせることは」
 このことはとだ、山縣はこうも言った。
「出来ない」
「大韓帝国が完全に落ちると」
「その時はですね」
「もう我々にとってはです」
「まさに喉元に刃を突き付けられたことです」
「だからだ、何とかしなくてはならない」
 これもまた山縣の考えだった、彼は頭の中であの辺りの地図を浮かべそのうえで考え周りに話していた。
「あの国に対してな」
「左様ですね」
「これからどうするか」
「それ次第で、です」
「我が国の命運が決まります」
 周りも深刻な顔だった、その露西亜の脅威を感じる中でだった。
 山縣は元老の一人として政治を動かしていた、その中で。
 彼を見た新聞記者の一人がこんなことを言った。
「山縣公は口を開くとだ」
「ぞんざいに言うな」
「あの人はいつも」
「実に不遜だ」
「笑われることもないしな」
「それに言葉自体も非常に少ない」
「違う、そうじゃない」
 その記
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