暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/WizarDragonknight
二つの赤
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「さあ! 絶望してファントムを生み出せ!」

 人々が逃げる。誰もが悲鳴を上げながら、一目散に逃げ回る。
 休日のにぎやかな市街地にそぐわない、絶望の肉声。

「アッハハハハハ! 愉快愉快!」

 ファントム。
 魔力を持つ人間、ゲートより生まれる魔人。
 今、仲間を増やすために、人々を絶望させようと町を闊歩していた。
 燃える炎を模った頭部の黒い怪人。全身にも炎の模様が描かれており、歩く姿は見るものを生命の根源的恐怖に陥れる。
 ファントムは両手に炎を宿し、それを投げる。綺麗なショッピングモールがどんどん破壊されていき、悲鳴が空間を埋めていく。誰も自分に逆らう術を持たない。その事実を理解したファントムは、気分がよくなった。

「んんんん?」

 破壊活動を続けるファントム。首を曲げれば、階段の裏に隠れていた人物と目が合う。

「ひっ!」

 隠れていた無力な人間は、顔を引きつらせる。穏やかそうなおさげ髪の少女は、ファントムの一睨みで動けなくなった。

「クククク……どうした人間? 絶望しろ。そのまま我らファントムを生み出すのだ!」
「ひっ……」

 人間は、まるでかかしのように立ったその場で動けなくなった。
 ファントムは悠々と、その顎を掴む。

「さあ? どうすれば絶望してくれる? 痛めつけるのが鉄板だが、それでいいか? それとも……?」
「助けて……くいなちゃん……まゆちゃん……」
「ほれほれ? キキ、逃げられないか?」

 ファントムが、人間を煽る。すると、どこからともなく、ファントムの視界を邪魔するものが現れた。
 ファントムを目くらましのように、少女から視界を奪うもの。
 妙に声がダンディなヒヨコと、どこにでもいるスズメたちだった。

「なあっ? 邪魔するな! この鳥どもが!」

 ファントムは鳥たちを振り払う。その隙に我を取り戻した人間は、逃走を図ろうとしている。

「逃がすか!」
「鳥太郎!」

 すると、人間の呼びかけに、鳥たちも解散する。
 どんどん小さくなっていく人間。他にはいないので、ファントムは彼女をターゲットにすることにした。

「待て! 人間!」
「ひいいいいいっ!」

 人間は全力で逃げ惑う。
 見滝原と呼ばれる街のショッピングモール。人間の方が詳しいが、獲物の匂いを逃がすほど、ファントム、ヘルハウンドは甘くない。
 鋭い嗅覚を駆使し、逃げ遅れた獲物を探す。

「ふうん……人間……そこだ!」

 口から吐いた炎。それが自動販売機を焼き払い、ターゲットのかかし女の姿を露にした。

「ひいいいいっ!」

 また、かかしのように固まる人間。
 改めて、ファントムとしてお決まりの言葉を口にする。

「終わりだ、人間
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ