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戦国異伝供書
第百話 両翼を奪いその八

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「そうなられるかと。家臣の方も揃っておられますし」
「ならばな、ただ当家は天下は望まぬな」
「あくまで山陽と山陰のみであり」
「それ以上は望まず、だからな」
「織田家とはですな」
「わしはあまり戦うつもりはない」
「国境を接することになっても」
 父に対して問うた。
「それでもですな」
「そうじゃ、それでもな」
「戦わぬことですか」
「そのつもりじゃ、戦おうとも」
 それでもというのだ。
「とことんまではせずにな」
「適度なところで、ですか」
「よい、最悪家が残ればな」
 それでというのだ。
「わしはよいと思っておる」
「左様ですか」
「天下は最初から求めておらぬしな」
 このこともあってというのだ。
「それでじゃ」
「織田家が迫ろうとも」
「適度でよい」
「攻めませぬか」
「織田家が来れば防ぐ」
「その程度ですか」
「播磨や因幡で止まればな」
 織田家が、というのだ。
「それでじゃ」
「よいですか」
「うむ、しかも織田家の兵は弱いというが」
 このことは元就も聞いている。
「当家の兵よりもな」
「当家の兵も弱いですが」
「山陽と山陰の兵も」
「その兵よりもですか」
「弱いという、織田家が勢力を広めるなら近畿じゃが」 
 この地域の兵のことも話した。
「やはり弱い、だからな」
「織田家の兵は弱い」
「そのことは間違いないですか」
「どうしても」
「しかし数は多くな」
 兵は弱くともというのだ。
「尚且つ装備もよい」
「その鉄砲ですか」
「それですか」
「それがありますか」
「既に千丁は揃えておるというしな」
 その鉄砲がというのだ。
「具足もよいし弓矢も多く槍もな」
「槍、ですか」
「戦では最も多いですが」
「その槍もですか」
「相当に長い槍でな」
 織田家のその槍の話もした。
「それを使うという」
「長槍ですか」
「その槍も使ってきてですか」
「そうして戦ってきますか」
「しかも将はよい者ばかりじゃ」
 率いる者達はというのだ。
「だから兵は弱くともな」
「強いですか」
「全体として見ると」
「織田家はそうなのですか」
「だから戦うべきでない」
 織田家はというのだ。
「わしの謀も通じぬであろうしな」
「織田殿は優れた方であり」
「家臣の方々も優れているからですか」
「それで、ですか」
「優れた者には策は通じぬ」
 一言で言い切った。
「頭が切れて策が見破られる」
「だからですか」
「それ故にですか」
「我等にしても」
「左様、だからな」
 それ故にというのだ。
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