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或る皇国将校の回想録
幕間 安東夫妻のほのぼの☆東洲再建記
第一章安東家中改革
安東家中大改革(下)
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…食い扶持と治安を保障するものが何者かを教えれば、問題は起きないのです。
そして浮き上がった明確な政治的意図を持った連中は排除しなさい。
ここは叛徒の地です、理由はいくらでも付けられる」
 戦争指導者、あるいは権勢政治家としての評価とは別に、経済官僚としての瑠衣子は間違いなく東洲統治に有効な特効薬であった。
 初動の不穏分子を潰してからは劇的に治安は改善し、“食わせてくれる殿様”としての安東を民草に植えつけることに成功していた。
 つまりは大部分の人間は“真っ当な殿様”の下で給金と適正な価格の食料さえ手に入ればそれで満足だったのだ。

「鉱山を拡大するのです、鉱石を精錬する炉を作るのです。材木を切り出すのです。それらを加工し、船を作るのです。
税収を制限して投資の利潤で歳入を賄いましょう、この空が工場の排煙で埋まるまで
守原と結び、天領との競争に敗れた彼らを建設業の力を借り、いずれはそれを凌駕しましょう。
駒城と結び、彼らの農産物と良馬を買い入れましょう、その代わり彼らに工業品を納入するのです」
 文官達への訓示は極めて端的であった。 純粋に東洲の統治のみを語るのであれば安東瑠衣子は極めて特異な特効薬であった
 彼女は財政と経済政策、海運の掌握により中間層となる重臣団の権限を抑制。そして文官と結びつきやすい商工業を優位にすることで五将家の中でも特徴的な文官主導による集権化を成し遂げたのだ。

「道筋は作れたがまだやるべきこともこれから噴出する問題もある。
気を抜いてならない、諸君らの精勤が必要とされるのはこれからも変わらない」
 光貞はどこか浮ついた調子の州政庁の主要人物に珍しく苦言を呈す程に彼らは浮かれていた。最悪の事態から成長段階に入ったという明確な自覚があるからだろう。
 ことこの点においては慢性的な人手不足から徴税上の不合理を正せぬまま放任状態を続けている執政府官僚官僚団が目指す物を先に手に入れたともいえる――安東瑠衣子はそう自負していた。





「勝ったわ、末美。もう我々を止められるのは安東の二人だけよ。ふ、ふふふ……州政庁は今私の手にある」
 
「いやぁはははは、今回ばかりは素直に姉上は凄いと思いますよ。
勿論、姉上のやりたいように根回しをした義兄上があってこそですが」
 弟の末美は胸を張る姉を珍しく素直に褒め称えた。それほどの大事業であった。人死にも出た。

「 まだ、まだ、次は中央!そう、執政府よ!駒州も守原も西原も宮野木も黙らせてやる」
 戸守を摘発した時から姿をくらまし、いつの間にか皇都に逃げ出した工部省の宮浜の事を彼女はまだ根に持っていた。
 鉱山技術を持つ惣の首脳部の謎めいた死についてあの男が関与しているのはまず間違いない。瑠衣子は山造衆を屈服させた後に安東の支配
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