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非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
第89話『優菜の想い』
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に口出しされたが、それでも踏ん切りはついていないのだ。


「ハルト」

「うわっ!? な、なに結月?」

「いや、頭抱えてたからどうしたのかなって…」

「何でもないよ! 何でも、ないんだ…」


思い浮かべていた人物が突然目の前に現れて、晴登は必要以上に驚いた。頭を抱えていた原因は目の前にいるのだと、そんなことは言える訳もなく、晴登は顔を紅くしながら何とか誤魔化そうとする。
それにしても、どうして結月はこうも平然としていられるのだろうか。噂の内容を知ってから、彼女を見る度に晴登はそわそわしっぱなしだというのに。

すると、結月は晴登の耳に近づいて、小声で言った。


「今夜、花火が上がる時間になったら浜辺に来て」

「え…」


彼女はそう言い残すと、晴登から離れていった。一方晴登は、脳の処理が追いつかず、呆けた顔でその後ろ姿を眺める。


──花火の上がる時間に、浜辺に来て。


晴登は結月の言葉を反芻する。そしてようやく理解した。
もしかしなくても、これが"呼び出し"というやつではないだろうか。マンガでは、告白する時は相手を空き教室や校舎裏といった、人気のない場所に呼び出すのが常である。つまり、結月は告白する気なのではないか。元々結月から花火に誘ってきた訳だし、噂の内容がアレなら、それはもう確定事項で・・・


「いや、早まるな。まだそうと決まった訳じゃ…!」


そう口では零しつつも、もういい加減現実を見ろと、良心が頭の中で囁いているような気がした。もう、誤魔化すことはできないだろう。ついに、この曖昧な関係に決着をつけねばなるまい。


「俺は・・・」


決断の時が、刻一刻と迫るのだった。







ついにその時が来た。花火が打ち上がるまで、あと15分。生徒たちは各々好きな場所で待機し、花火を今か今かと待ちわびている。とはいえ、わざわざ山を降りて浜辺で眺めようとする物好きは誰もいなかった。そう、1人を除いて。


「どうしよう…」


浜辺で1人膝を抱えて座り込み、月光を反射して輝く水面を眺めながら、晴登は大きくため息をついた。結月に誘われてもなお、未だにどうすべきか答えは出せていない。夕食の時もそればかり考えてずっと上の空になってしまい、うんうんと悩んでいる内に今に至っている。
誰もいないのは好都合だが、逆に一層緊張感は高まってしまう。

とにかく落ち着け。結月が告白してくると仮定すると、まず晴登が告白する必要はなくなる。だから、何と答えるかに焦点を当てて考えればいい訳だ。
だがもし、結月はただ一緒に花火を見たかっただけだったとしたら、その時は晴登が告白しなければならないのだろうか。いや、した方がいいのだろう。わかんない
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