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麗しのヴァンパイア
第二百六十九話

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第二百六十九話  擦れ違った女
 使い魔達は姿を消してカーミラと共にいる、そうして彼女を護っているがそれでもだ。彼等はふと言った。
「人が少ないですね」
「流石に深夜の二時になりますと」
「車は時折公道に見ますが」
「それでもですね」
「夜は人は大抵寝ているわ」
 それ故にというのだ。
「だからよ」
「人はいないですね」
「左様ですね」
「こうして歩いていても」
「会うことはないですね」
「そうよ、けれど」
 ここでだ、カーミラは。
 妖しい笑みを浮かべた、それでこう言った。
「たまに会う人がいいわね」
「左様ですね」
「昼は多くの出会いがある分思うこともないですが」
「深夜は稀である」
「それならですね」
「目に止まりますね」
「心にもね」
 目からそうなるというのだ。
「だからね」
「それで、ですね」
「ご主人様は今それを期待されていますね」
「誰かと会われることを」
「そうなのですね」
「そうよ、だからね」
 それでとだ、妖しい笑みのまま話した。
「期待しているわ」
「では期待しつつ」
「そのうえで、ですね」
「散策を続けていかれますね」
「その様にされますね」
「そうするわ、このままね」
 まさにというのだ。
「そうしていくわ」
「では」
「それではですね」
「このまま進んでいきましょう」
「そうしていきましょう」
 使い魔達も言う、そしてだった。
 カーミラはここである女を前に見た、そうして。
 その女と擦れ違ってだ、使い魔達に言った。
「今の人が何かわかったわ」
「といいますと」
「どういった方ですか?」
「それはね」
 歩きつつ話す、擦れ違った女はもう見ていなかった。


第二百六十九話   完


                2020・6・4
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