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或る皇国将校の回想録
幕間 安東夫妻のほのぼの☆東洲再建記
第一章安東家中改革
安東家中大改革(上)
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皇紀五百四十四年 十二月 某日 皇都 某料亭 
”東洲公爵”安東家 公子 安東光貞

 東洲乱の戦後処理が終わり。いよいよ安東家は肩書を関州公爵から東洲公爵に改め新たな本貫を掌握しようという頃であった。
 東洲公と肩書を変えた安東家の後継者、安東光貞は二十の半ばを迎えいよいよ嫁を迎えよう、となったのである。
 この縁談を提案したのは叔父である安東吉光、父の弟で政治的な参謀役を務めている切れ者だ。執政府内で巧みに動き回っている大物である。

「海良の御家”は”大変だと存じます、だからこそ、我々は手を取り合うべきです」
 海良家は東洲灘のいくつかの島を支配している小将家だ。儀礼を省いて言えば――海賊衆と呼ばれていた者達の中でも特に強力な家であった。
 目加田公の東洲乱の際に東洲公を裏切り皇家の直参となった(名目上は)

「そうでございますわね。安東の御家も御国の為に御苦労なさっていらっしゃいます」
 そう答えたのは海良瑠衣子、海良家当主の長女である。二十を越して数年。
 本来であれば五、六年前に嫁いでいるべき年である。
 切れ長の目と引き結ばれた唇、そしてそこから発せられる野戦で鍛えられた指揮官の如き良く通る声は、男で船に乗れる立場なら文句なしに当主となったとの評判が嘘ではないと感じさせる一種の覇気を感じさせる。
 眼鏡を通して鋭い視線を飛ばし、知恵者でとりわけ数字に強いと評判が嘘ではないことを示している。

「ハハハハ、耳が痛いことをおっしゃる」
 光貞は思わず苦笑を浮かべながら、あることが気にかかった。
「瑠衣子さん、よろしいですか?」

「はい」
「私の名誉にかけて今ここで話を聞けるのは我々だけです。番の者達は互いに一間あけて護衛についています
――直接的にきかせてくれ。貴方達は東洲と我々の問題をどの程度把握している?」

「‥‥何故私のような女にそのようなことを?」
「君、我々は龍塞を眺めて暮らしてきたのだよ、女性の知恵を借りるに恥ずるつもりはない。それに私は――その、なんだ。父のような綱渡りはできないのでね」
 光貞は自身の顔が紅潮するのを感じながら声を上ずらせないように呼吸を整えた。
「父は批判されることも多いが無能ではない。私も努力はしてきたつもりだが――英康殿ののように果断でも、保胤殿のように理性と徳を持ったわけでも、信置殿のように機知と柔軟さを持っているわけでもない。だっだからこそ私は信頼できる相手が欲しいんだよ」

 瑠衣子はポカンと顔を赤く染めた癖に縁談で話すべき内容とも政治的駆け引きの場で話す事ともかけ離れた内容を話す光貞を眺めた。

「君は計数に強く海良の勘定を切り盛りしている程だと聞いた。どうだい、話せるかね」

「‥‥していいのならします。私は帳簿を眺めて世の在り方
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